攻める総務

リーガルテック導入、部門をまたぐ調整は? グローバル企業の法務に聞く事例「勝機はスモールスタートにあり」(4/5 ページ)

» 2021年06月03日 07時00分 公開
[BUSINESS LAWYERS]

3.テクノロジーの活用推進は若手が活躍できる領域

──テクノロジー導入時には、社内のワークフローへの影響も生じると思います。例えばクラウドサインの導入時にハードルになった部分などはありましたか。

伊與部氏: 調達部門、法務部門、発注管理部門、IT部門など複数部門をまたいで業務フローとマッチするかどうかすり合わせる必要があったのが、苦労した点の1つです。税務を担当する経理関係の部門とは、電子帳簿保存法の要件を満たせるかどうかも議論になりました。保存要件や検索性に関する検証など、苦労する点もありましたが、要件を満たしていることを確認し、導入を決めました(※1)。

 また、本格的に導入を進めていくにあたって難しいと感じたのは、お客さまに電子契約を受け入れていただくことです。当社から画一的に「今後の契約は全て電子でお願いします」とお願いするのには、まだまだハードルがあると思っています。そうした意味でも、当社側が購買主体となり条件等をコントロールしやすい発注部門、なかでも現場担当者が興味をもってくれた調達部門から導入し、スモールスタートさせたというわけです。

(※1)クラウドサインの電子帳簿保存法への対応については下記記事も参照ください。
サインのリ・デザイン「契約書の『データ保存』と電子帳簿保存法—電子契約データ保管の注意点」(2018年3月28日、2020年11月18日最終更新)

──導入部門の反応はいかがですか。

伊與部氏: 調達部門で導入をリードしてくれた社員に抵抗などはなかったか聞いたところ、思ったよりも抵抗なく、スムーズに話が進んだようです。やはり緊急事態宣言下で物理的に出社できず、紙を扱えないことによる苦労のほうが大きかったのだと思います。

──新たな領域でのリーガルテックの活用も検討されているのでしょうか。

伊與部氏: 最近は、ボトムアップで業務を変えていく計画を進めているところです。日揮ホールディングスの社員や日揮グローバルの契約部の社員を中心に、有志の若手で5〜6人のチームをつくり、リーガルテック関連の情報収集や具体的な活用方法の検討・実行の取り組みをはじめています。

 経験が重視される法務業務のなかでも、テクノロジーの活用推進は若手が活躍できる領域だと思います。若いメンバーでどんどん企画し、チームを引っ張るような流れが作れればと考えています。

──テクノロジー導入の費用対効果についてはどうお考えでしょうか。

飯田氏: 管理部門である法務の業務は、新たなテクノロジー導入にあたって必要となる費用対効果の算出・説明が難しいといえます。たとえ数値として説明ができなくとも、部員のリテラシーや業務効率の向上が期待できるものであれば、ある程度は必要な投資と割り切って活用を進めていきたいと考えています。一方で、現在、法務部内で定量的な指標の算出も進めているところです。それがあることで、よりテクノロジー導入が進めやすくなるのも事実だと思います。

photo (左から)日揮ホールディングス株式会社 中島 真紀氏、飯田 十三氏、舘野 昌一氏

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