データ管理で“ズタボロ”のLINEと経営統合した、ヤフーに圧し掛かる責任本田雅一の時事想々(1/3 ページ)

» 2021年06月16日 17時00分 公開
[本田雅一ITmedia]

 LINEが個人情報を中国のサーバに保管していたというニュースが話題になったのは、今年3月のこと。かいつまんで経緯を振り返ると、Yahoo! JAPANの運営母体とLINEの合併が承認され、組織や運営サービスの統合などが進められる中で、Yahoo!側がLINEのシステムを精査していく際に問題が発見され、自ら問題を報告した──というのが当時の流れだった。

 3月19日、LINEが個人情報保護委員会に報告した、いわば“自己反省文”のような報告書では、中国でのサービス開発や保守、運用業務を終了させ、中国で管理していたデータを国内移転させることや、韓国のデータセンターに保管されていたトーク内の画像・動画・ファイルデータを今年6月までに国内に移管させるとしていた。

 他にも細かな対策やデータの扱いについての透明性を高める対策など、“今さら”と思えるような内容が多かったものの、まずはLINEによる自浄作用がどこまで働くのか見てみようというところにまで収まった。

 この話が第三者からすっぱ抜かれたものではなかったことは、両ブランドとPayPayブランドを運営するZホールディングス(当時)にとってはラッキーだったに違いない。

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“真摯な対応”をぶち壊したLINEのウソ

 LINEのデータ管理や運用に関しては、日本に住む個人に対して必ずしも誠実ではなかった。それが組織的な判断によるものなのか、現場判断での結果なのか真相は分からない。しかし、組織としての甘さが個人情報の越境管理に現れ、LINEブランド全体への信頼性に疑問をもたらした。

 だからこそ、自ら個人情報の扱いに関する問題を報告し、“グローバルなデータガバナンスに関する特別委員会”を設置した上で、今後については透明性を──と3月の時点で明らかにしたわけだ。

 筆者は当時、「Yahoo!のエンジニアが問題を指摘した」ことをポジティブに捉えていた。LINEが潜在的に抱えていた問題を、老舗のネット企業が発見し、改善計画を発表するという流れは悪くない。LINEブランドに対してもプラスに働くのではないかと感じたほどだ。

 Zホールディングスは真摯(しんし)な対応で問題を解決へと向かわせることで、次のステージに進もうと考えていたのだろう。3月の会見では「法的な問題の有無ではなく、ユーザーの感覚でおかしい、気持ち悪いと感じさせないよう配慮する必要があった」とLINEの出澤剛社長がコメントしていた。このことからも彼らの真剣さは感じとれていた。

 しかし、その第1次報告として6月11日に出されたレポートは、LINEに対する信頼をさらに揺るがすものだった。

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