そもそもZホールディングスとLINEの経営統合は、圧倒的なブランド力やアクセス数を持ちながらも、利用者の高年齢化がジワジワと進んできたYahoo!ブランドを背景に、スマートフォンユーザーの大多数が利用するLINEを統合することで、次世代のサービス開発へとつなげることが目的だったはずだ。
経営統合後に開発するとしていたサービスも、スマートフォンを通じたソーシャルコマースや、飲食・旅行業務で双方が得意とする顧客とのエンゲージメントを取れるようにするなど、Yahoo!とLINEがそれぞれの既存サービスを基盤に、統合、発展させるイメージだった。
いずれも課題を解決できるだけの実力を持つZホールディングスだが、片方のLINEのサービス全体に疑いが持たれるようでは、もくろんでいた計画にも影響を与えるだろう。
ZホールディングスはLINEとの経営統合に際し、海外展開の強化についても言及していた。23年度に売上高2兆円、営業利益2250億円という目標は、これまでの実績値(Zホールディングスの21年3月期売り上げは1兆1400億円、LINEは19年12月期の数字で2274億円だった)から勘案すると、国内の事業強化だけでは達成できないと考えられる。
Zホールディングスの川邊健太郎社長のいう「GAFAへの対抗」という言葉には、国内市場の死守と事業領域拡大、そしてLINEと統合してより良いサービスへと発展させた上での海外進出の両方の意味があるはずだ。
しかし、そもそもLINEは台湾、タイ以外ではほとんど使われていない。比較的ユーザーが多いとされるインドネシアも多数派とはいえず、アジアへの進出を狙うとしても足掛かりとなるユーザーの“ベース”はほとんどないと言わざるを得ない。
そもそもでいえば、LINEはグローバル戦略でライバルに後れを取り、結果的にアジア地区でのユーザー層拡大が叶わなかった過去もある。AI投資による新規事業開拓といっても、ここでの足踏みは海外勢に対する出遅れにつながる。
一方で、一連の個人情報取扱に関する問題を経ても、日本国内でのLINEの利用率が下がるとは考えにくい。Zホールディングスの今後は、主に国内事業を海外勢から守る防衛戦略が中心になっていくだろう。
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