猛暑の愛知で冷やし旅? コロナ影響続くJR東海「奇策」の狙い見据える先はジブリパーク(1/2 ページ)

» 2021年06月29日 16時50分 公開
[今野大一ITmedia]

 「『あのポスター何ですか? 笑』と最近、社内外の方から言われています」と笑顔で語るのは、JR東海営業本部の荒井良介氏。「あのポスター」とはこれだ。

「あいち冷やし旅」のポスター(以下クレジットのない写真はJR東海提供)

 今夏、JR東海は愛知県と「あいち冷やし旅」キャンペーンを立ち上げた。今年の7〜9月に愛知県を舞台に展開する観光キャンペーンだ。

 「いやいや、冷やし旅どころか、愛知県は暑い日本の中でもとりわけ暑いエリアやないかい!」というツッコミが聞こえてきそうではあるものの、JR東海と愛知県が県内全域でアクティビティー、グルメなど、多種多様な「冷やしコンテンツ」をそろえ、キャンペーン化した。

 このポスターは、名古屋市内にあるウェルビー栄のアイスサウナをアピールするもの。最低室温約マイナス25度、最低水温約3度と「極寒」の水風呂だ。ウェルビー栄は北極圏に位置するサウナの本場・フィンランドのラップランドを再現したサウナで、県外からもサウナー(サウナ愛好家)がわざわざ訪れる、知る人ぞ知る施設である。今年はキャンペーン期間の7〜9月限定で、水風呂にメントールが投入され、いつも以上の「冷やし体験」を提供できるようにした。

 もう1つのポスターは、凍らせたタコをビジュアル化したもので、日間賀島(ひまかじま)のタコをイメージしているという。日間賀島は、知多半島の先端付近に浮かぶ島で、タコがデザインされた駐在所やマンホールがある、「タコの島」として愛知県民に親しまれている離島だ。

タコのデザインが施された駐在所(日間賀島観光協会提供)
マンホールにもタコがデザインされている(日間賀島観光協会提供)

 三河湾、伊勢湾といった愛知県の海は、矢作川、豊川、木曽三川などが森の栄養分を山から運んでくるため、それらの豊かな栄養分に育まれた海産物に恵まれている。中でも日間賀島のタコは県民には知られた存在で、タコを食べに島を訪れる観光客が絶えない。

日間賀島のタココース料理の一例(3、4人前。南知多町観光協会提供)

 おいしさの秘訣の一つが「冷凍」で、凍らせることにより細胞が破壊されて柔らかくうまみが増すという。「タコが『冷やし旅』をしておいしくなるというストーリー」(前出の荒井氏)とのことで、その人気を愛知県民から全国へ広げようという試みだ。

 もっともキャンペーンを展開するJR東海は、新型コロナウイルス感染症の影響を受けている。昨年度は通期で2000億円を超える最終赤字となり、今年度に入っても主力の東海道新幹線は、コロナ前の2019年度に比べて3割程度の輸送量にとどまっている。

昨年度は通期で2000億円を超える最終赤字(撮影:河嶌太郎)

 これまで東海道新幹線は出張・ビジネス需要を取り込み、JR東海は大きく発展してきた。JR東海エージェンシーが調査した東海道新幹線のユーザープロファイル2019によると、出張・ビジネス目的が63.8%、観光目的が12.4%となっている。

東海道新幹線は出張・ビジネス目的が63.8%、観光目的が12.4%となっている(JR東海エージェンシーのWebサイトより)

 ビジネス・出張需要は、企業の予算や方針に縛られることから、需要喚起は困難な一方、観光需要はプロモーションなどにより創出できる。

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