「一生懸命コロナ対策をしてくれる政府や自治体の人間に謝れ!」というお叱りがあちこちから飛んできそうだが、客観的な数字や、飲食店が置かれている環境を冷静に見てみると、そのような結論にならざるを得ない。
例えば、もし権力者が「コロナ対策をしっかりやってます」ということを国民にアピールしようと考えて、どこかの産業を犠牲にしなくてはいけないといった決断を迫られたとき、「経済に最もダメージが少ない産業」が選ばれるのは言うまでもないだろう。
多くの人が働き、経済に占める割合が高い産業を犠牲にしたら、社会への悪影響を計りしれない。どうしてもマイノリティーがターゲットになってしまう。
では、それを踏まえて、今回4度目の緊急事態宣言があった東京都の「くらしと統計2021」の中の「経済活動別(産業別)GDP構成比(名目)の比較」を見てみよう。107兆円(平成30年度)というGDPの中でもっとも比率の少ない産業は、「電気・ガス・水道・廃棄物処理」(1.6%)だが、ここはライフラインなので、コロナ対策といえども犠牲にすることなどできるわけがない。
では、その次にGDPの比率が少ない産業は何かというと、もう予想がつくだろう。「宿泊・飲食サービス業」(2.2%)だ。
東京都のGDPの中で20.3%を占めているのは「卸売・小売業」で、「宿泊・飲食サービス業」の10倍弱。コロナで大打撃を受けている「飲食」「観光」という産業は、実は都市のGDP的には「マイノリティー」なのだ。
このような表現に違和感を覚える方も多いはずだ。よく日本は「飲食店が多い」と言われ、数字的に見てもそれは事実だ。福岡県が総務省統計などをベースにして「人口1000人あたりのレストラン数」(平成27年時点)を調べたところ、東京が6.22店でトップ。次いでパリ(6.15)、ロサンゼルス(2.37)、ニューヨーク(1.39)、ソウル(1.37)、北京(0.47)など他の都市は足元にも及ばない。
しかし、そんな「世界一の飲食都市・東京」の中でも、実はGDPの中で占める割合は2%程度なのだ。厳しい言い方だが、数が圧倒的に多いわりには、経済に対して影響力が弱いのが、「飲食店」なのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング