フランス司法当局がユニクロなど捜査 新疆問題で表面化する日本アパレルが抱えるジレンマ磯部孝のアパレル最前線(2/4 ページ)

» 2021年07月15日 05時00分 公開
[磯部孝ITmedia]

無印良品は「新疆」のマイナスイメージに配慮?

 ユニクロは国内アパレル企業の中では、サプライチェーンに関する情報開示が進んでいる。ユニクロとジーユーで使っている主要素材工場、ファーストリテイリングとして取引のある主要縫製工場、一部工程の外注先工場のリストを年次更新、公開している。しかし、ユニクロやジーユークラスの生産ロットをこなすのは、町工場とはいかない。

 資金力も含め、ある程度の規模感のある工場サイズとなる。当然、原材料調達や加工などグループ企業で行うこともあるだろうし、ましてや混紡素材の成分まで特定させるのは難しい。

 無印良品も、2016年から自社社員の現地訪問記録を公開しているが、06〜19年の13年間で現地入りしたのは8回。訪問年度や見学工程を見る限り、その計画性は認められず、サプライチェーン管理を目的とした訪問とは言いにくい気がする。

 無印良品のオンラインストアを見ても「新疆綿」の表示は見当たらない。全て「超長綿」という綿糸の特徴を強調させた言い回しにすり替わっている。問題のない新疆綿は継続使用といいつつも、一般消費者が感じる「新疆」というマイナスイメージには配慮しているようだ。

ユニクロ (画像提供:ゲッティイメージズ)

 代表的な例として、ユニクロ、無印良品を取り上げてきたが、他のアパレル企業の対応はまちまち。5月22日付の日本経済新聞にアパレル主要50社の対応がリスト化されていた。新疆綿を使用している企業が14社、不使用16社、調査中7社、無回答13社だった。中には、新疆綿の取り扱いを中止、見合わせる企業もあったが、それでこの問題が解決するものではない。

 そもそも新疆綿は、中国で生産される綿の84.6%(国際綿花諮問委員会調)を占めるのだから、中国素材もしくは中国生産している商品だと、かなりの高確率で新疆産の綿にあたる。新疆綿の取り扱いをしていなくても、新疆産の綿入り素材を使用してしまう可能性は高い。

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