海外メディアは日本の「コンビニ」をベタ褒めしているが、外国での普及が難しいワケスピン経済の歩き方(5/5 ページ)

» 2021年08月03日 09時42分 公開
[窪田順生ITmedia]
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派手に日本のお菓子をバラまくべし

 このように成長著しい日本の菓子メーカーの海外展開に、今回の五輪が追い風になることは間違いない。

 もちろん、それは菓子業界もよく分かっている。東京五輪の選手村食堂では「果汁グミ」や「アポロ」などが山盛りで置かれており、選手がこぞってSNSで紹介して話題になっている。アスリートが「日本のお菓子」を世界に広めるインフルエンサーになってくれているのだ。

 また、五輪関係者の受け入れ先のホテルでも、「うまい棒」などの駄菓子を無料で提供して、こちらも好評だという。

世界市場を見ると、日本のメーカーは苦戦しているが……(提供:ゲッティイメージズ)

 お菓子はコンビニほど低賃金に依存していないし、自販機のように文化の壁もない。また、コロナ禍のようなことが起きても「巣ごもり消費」があるので打撃が少ない。五輪後の日本の中でも、かなり有望な成長分野と言える。

 今からでも遅くない、世界からやってくるアスリートやメディア関係者などに、もっと派手に日本のお菓子をバラまいていくべきだろう。

 世界のお菓子市場では、ペプシコやネスレという欧米のメーカーが席巻していて、日本メーカーは市場シェアでベスト10にどうにか食い込むのがやっとである。グローバルで飲料・食品を幅広く展開するペプシコやネスレなどと比べると、企業規模がまったく違うのだ。しかし、それは裏を返せば、まだ成長の余地があるということだ。五輪によって「日本お菓子スゲーな」という評価が世界に広まれば、M&Aやアライアンスの可能性も広がって、多国籍企業への道も開けていくはずだ。

 今では、コンビニや自販機のほうが「日本の強み」というイメージが強いかもしれないが、あと数年したらお菓子のほうがそのような評価になっている可能性がある。

 海外に行ったら外国人から、「日本? ああ、ポッキーの国でしょ? 東京五輪であのおいしさを知ったよ」なんて言われる日がくるのも、そう遠くないかもしれない。

窪田順生氏のプロフィール:

 テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで300件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。

 近著に愛国報道の問題点を検証した『「愛国」という名の亡国論 「日本人すごい」が日本をダメにする』(さくら舎)。このほか、本連載の人気記事をまとめた『バカ売れ法則大全』(共著/SBクリエイティブ)、『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。


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