そのような意味では、アスリートやメディアが、日本の手厚いもてなし、サービスの奥深さ、高い技術力などをSNSで世界中に「宣伝」してくれている今の状況は「大成功」と言える。
しかし、いくらアスリートやメディアがベタ褒めしてくれたところで、それが必ずしも世界に広まるとは限らない。あまりにも日本特有の環境や特殊事情に基づいたサービスや製品などの場合はベタ褒めされて終わってしまう恐れがある。われわれが『世界の果てまでイッテQ!』なんかで異なる文化の国を見て、「へえ、珍しいねえ」と感想を抱くように、「日本っていろいろ珍しいものがあるね」という社交辞令的な感想が寄せられるだけで終わってしまうのだ。
では、外国人アスリートやメディアが「アピール」してくれているものの中で、実際に世界に広まっていけるものは何か。
残念ながら「コンビニ」はちょっと難しいだろう。日本のコンビニは、外国人アスリートや外国人メディアから非常に高い評価を受けている。世界の中でも、これだけ豊富な食品をそろえて、雑誌、衣類、化粧品などあらゆるモノを扱い、さらにはATMやチケットまで買える多機能なコンビニは珍しいからだ。また、先ほどのニュースの見出しにもあったように、「コンビニパン」も安くてうまいと絶賛されている。
が、これをどんなに世界にアピールしたところで、「日本文化」として広めることはできない。日本国内のコンビニのクオリティーは、この国特有の「低賃金労働」によって成り立っているからだ。
リクルートの調査研究機関「ジョブズリサーチセンター」の調べによると、21年6月度の三大都市圏(首都圏・東海・関西)のコンビニの平均時給は998円となっている。また、日本のコンビニパンのコスパに大きく貢献しているのが、パン工場で働く人たちだが、こちらもかなりの低賃金だ。職業安定所で受理した無期かつフルタイムの求人にかかわる賃金が公表されているが、パン工場を含む「保存食品製造工等」は975円(19年度)。場所によっては、コンビニバイトよりも薄給なのだ。
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