GMO熊谷社長に直撃 NFT市場「アダム」は、コンテンツホルダーの“天地創造”を目指す(1/2 ページ)

» 2021年08月13日 14時25分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 GMOインターネットは、NFTのマーケットプレイス「Adam byGMO」(アダム)を8月にスタートする。アダムでは、NFTを販売するだけでなく、二次流通の仕組みを用意し、その際にコンテンツクリエイターにも収益の一部が分配される仕組みを取るという。

 どんな世界を目指しているのか。GMOインターネットの熊谷正寿社長に聞いた。

GMOインターネットの熊谷正寿社長(GMOインターネット提供)

NFTに関心を持ったきっかけと経緯

——熊谷さんがNFTに関心を持ったきっかけは?

 NFTがこの1年くらい話題だが、最初はネット業界のはやり言葉の1つだと思っていた。勉強していく内に、世の中を変えるかもしれない衝撃的な仕組みなんじゃないかと。かつてインターネットに巡り会ったときの衝撃、ブロックチェーンに巡り会ったときの衝撃。それと、同じくらいの衝撃を受けた。

 知ったのは去年だが、NFTの仕組みのすごさを知ったのは今年だ。友人が、NFTのアートをプレゼントしてくれた。概念としては知っていたが、絵をいただいたのがきっかけだ。

 スマートコントラクトを使い、設計によって未来永劫(えいごう)、根本の人(クリエイターやパブリッシャー)にお金を返せる仕組みが作れる。26年間のネットの歴史は、昔ながらの著作権者にとって逆風だった。すべてのIPホルダーにとって、NFTの仕組みはハッピーになれるものだ。クリエイターにとって収入源になるような大変革を起こす。インターネットで虐げられてきた人が復活するチャンスだ。

アダムでの二次流通の形

——アダムでは、NFTの二次流通も可能だと発表した。

 アマゾンとメルカリをミックスしたイメージ。オークションシステムを備えているので、値段を決めることもできるし、オークションもできる。現代のアート流通と同じだ。プライマリで販売するのは、作家と絵のサイズでだいたい値が決まってくる。二次流通になると、クリスティーズやサザビーズのようにオークションになるだろう。

 IPホルダーの考え次第で、最初からオークションで販売されることもあるだろう。最初からオークションにすることのメリットは、その価値がマーケットで試されるということだ。

 NFTは、今は趣味性の高いデジタルコンテンツだけで閉じている。しかし、この仕組みは不動産や金融の証書まで応用が可能。唯一無二のものなら何でも対象だから、コンサート会場のチケットなどもそれに当たる。アートもあれば、本もあれば、トレカもある。すぐではないが、不動産証券も金融証券もある。こうしたマーケットを扱うのがアダムだ。

アダムを介さないユーザー同士のNFT流通は?

 アダムでのNFTの二次流通はどのような形で行われるのだろうか。NFTは、マーケットプレイスで購入するだけでなく、一般的なトークンと同様に、仮想通貨ウォレットへの出庫も可能だ。さらに、ウォレットから他のユーザーに送信して譲渡することもできる。アダムでも、ウォレットへの出庫は可能だ。

 

 しかし、ウォレットから送信することでユーザー間で直接売買したり、他のマーケットプレイスで売買したりした場合、「クリエイターやパブリッシャーへ、流通時の費用の一部を還元する」というアダムの構想はどうなるのだろうか?

 

 アダムの担当者によると、他のマーケットプレイスで買ったNFTをアダムで流通させる場合の制作者への支払いやコンテンツのコントロールは、「どのマーケットプレイスで購入されたものか、NFTのメタデータにどのような内容が記載されているかによって異なり、ケースバイケース」だとした。

 

 イーサリアム上で発行されるNFTは、ERC721/1155といった規格に則っているが、マーケットプレイスでやりとりするための情報は標準化されているわけではなく、あるところで購入したものを、簡単に別のマーケットプレイスに持っていけるわけではない。

 

 アダムで購入したNFTを、ユーザーがアダム外でやりとりした場合はどうなるのだろうか。「二次流通時のコンテンツ権利者への報酬(ロイヤリティ)ですが、ここでいう『流通』というのは『売買』を指すので、ロイヤリティが発生するケースには該当しない」(アダム担当者)とした。あくまでアダムの中でやりとりしたものに発生すると考えるのがよさそうだ。


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