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「世界一の現場力」を犠牲にする、無責任トップの罪河合薫の「社会を蝕む“ジジイの壁”」(3/4 ページ)

» 2021年09月10日 07時00分 公開
[河合薫ITmedia]

 現場が一流であることは、国際的な調査でも確認されています。

 2012年に行われた「OECD国際成人力調査(PIACC: Programme for the International Assessment of Adult Competencies/Survey of Adult Skills)」で、日本人が全ての項目で堂々のトップ。世界1位です。

 PIACCは24カ国・ 地域が参加した大規模な国際調査で、「経済のグローバル化や知識基盤社会への移行に伴い、雇用を確保し経済成長を促すために国民のスキルを高める必要がある」との認識から行われました。

 対象は16〜65歳の成人で、日本では住民基本台帳から層化二段階抽出法で1万1000人を抽出。うち5200人が参加し、調査項目は「仕事や日常生活で必要とされる汎用的スキル」として次の3つを調査しました。

「読解力」

社会に参加し、自らの目標を達成し、自らの知識と可能性を発展させるために、書かれたテキストを理解し、評価し、利用し、これに取り組む能力

「数的思考力」

さまざまな状況の下での数学的な必要性に関わり、対処していくために、数学的な情報や概念にアクセスし、利用し、解釈し、伝達する能力

「ITを活用した問題解決能力」

情報を獲得・評価し、他者とコミュニケーションをし、 実際的なタスクを遂行するために、デジタル技術、コミュニケーションツール及びネットワークを活用する能力


 調査方法は250人の調査員が対象者の自宅に訪問し、専用のPCで2時間超かけて行うという、日本の社会調査では例のない形態で行われました。層化二段階抽出法は統計的に確立されているサンプルの選出方法で、結果は「たまたま選ばれた人たち」のものではなく、日本人全員の傾向を示していると理解してください。

 そういった手の込んだ調査で、日本の労働者の質は世界トップであることという結果が出ました。「読解力」「数的思考力」「ITを活用した問題解決能力」の3分野全ての平均得点で、日本はトップ。 堂々の1位を獲得したのです。

 ちなみに、コロナ禍でリーダーが高く評価されたドイツは「読解力:15位」「数的思考力:12位」「ITを活用した問題解決力:11位」。日本、圧勝です。

国際的に見ても、労働者の質は高い(提供:ゲッティイメージズ)

 私はこれまで取材や講演会で訪れた全国津々浦々の“現場”で、「現場の力」に何度も感動し、「日本というのは、現場で愚直に働く人たちに支えられているんだなぁ」と何度も痛感してきました。

 しかし、その現場の力を生かしきれていない無責任なリーダーがのさばっているのが、今の日本です。

 そもそも明確なビジョンがない。そのビジョンを遂行するための準備もない。おまけに現場のマネジャーに裁量権も与えていません。

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