16年、福岡市が総務省の統計や「TripAdvisor」を元に世界の主要都市の飲食店を調べたところ、人口1000人当たりのレストラン数は東京(6.22)がパリ(6.15)やミラノ(5.04)を抑えてトップとなっている。ロサンゼルス(2.37)、ニューヨーク(1.39)など、北京(0.47)などは足元に及ばない。
そんな「日本のレストラン多すぎる問題」については、海外で活躍するような料理人は以前から警鐘を鳴らしてきた。例えば、ニューヨークでミシュラン星付きレストランのシェフを務めるなどキャリアを積んだ後、東京・青山で「ザ・バーン」のエグゼクティブシェフを務めている米澤文雄氏もこのように述べている。
「パリやニューヨークでは、厳しい飲食店の出店規制がありますが、日本にはあまりない。居酒屋が何軒も入ったビルが繁華街に林立する光景は、日本特有のものです」
「1つのパイを取り合っている状況であれば、人手不足にもなります。しかも日本は人口が減っている。仕事を適切に与えるためにも、ある程度の出店規制が必要だと僕は思います」(東洋経済オンライン 2020年10月10日)
日本では長くこういう問題を放置してきた。開業のハードルが低い外食などが典型だが、「小さな会社がたくさんあることは良いことだ」をスローガンに、中小零細企業の設立を応援してきた。
もちろん、それはちっとも悪いことではない。が、罪深いのはそうやって後先を考えずに増やしてきた中小零細企業を、同じく後先を考えずに「保護」していることだ。
ビジネスモデルが破綻して、従業員に対しても最低賃金以下の給料しか払えないような中小零細企業は本来、市場から退場するのが、経済の大原則だ。時代に合わない企業・産業が消えて、新たな成長する企業・産業が登場するという新陳代謝があって初めて経済は成長をする。労働者の待遇も上がるし、消費も喚起される。
しかし、日本の場合、自民党が中小企業3団体に支持されていることもあって、「経営が苦しい中小企業を倒産させない」という世界的にも異常な産業保護を50年以上続けてしまった。税制や補助金で、本来潰れているはずの中小零細企業に「延命措置」をとった。
もちろん、中小零細企業の経営者やその家族からすればこんなハッピーなことはないが、そこで働く従業員に賃上げなどの恩恵はほとんどない。「死に体」の会社が税金を無理に延命させても、労働者や日本経済にプラスはないのだ。そのグロテスクな構造の一端が先日、明らかになった。11月1日、財務省の有識者会議「財政制度等審議会」で、中小企業を支える2つの補助金の問題点が指摘されたのだ。
1つは、新型コロナ禍で打撃を受けた中小企業の事業転換の費用を支援する「事業再構築補助金」。補助額は最大1億円、補助率も費用の最大4分の3という手厚さだが、当初ニーズがあると見ていた飲食・宿泊業が2割程度にとどまっていた。つまり、「それほどダメージがない中小企業」が、「こんなおいしい制度、利用しなきゃ損だろ」と食いついている可能性があるのだ。
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