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» 2021年11月09日 09時55分 公開

なぜ某カフェチェーンは時給を上げないのか 「安いニッポン」の根本的な原因スピン経済の歩き方(5/6 ページ)

[窪田順生,ITmedia]

補助金を受け取る「リピーター」たち

 それがうかがえるのが、もう1つの「ものづくり補助金」である。これは、生産性を向上させる中小の取り組みを支援するということだが、直近3年で採択事業者を調べると、なんと15%が過去にもこの補助金を受け取った「リピーター」だった。

 もちろん、性善説に基づけば「生産性向上に向けてがんばり続けている」という見方になるのだろうが、性悪説に基づけば、「生産性向上するからお金ちょうだい」と言いながら、さして生産性向上せずに相手が忘れたころにまた「生産性向上するからお金ちょうだい」と申請しているような、不届な中小企業もあるかもしれないのだ。

 最後のセーフティネットである生活保護でさえ、不正受給をするような人々も一定数存在する中で、「あり得ない」と断言はできない。

 このような手厚い保護もあって、日本は家族経営や、いても社員数名という小さな会社であふれかえる、世界有数の中小企業大国になった。しかし、先ほどの外食と同じで、「数が多すぎる」ということは競争が激しくなる。

 小さな会社がすべて『下町ロケット』に出てくる佃製作所のように、世界に誇る技術などを持っているわけではないので当然、過酷な「安さ勝負」がスタートする。他社よりも1円でも安く、もっとお得に、もっと勉強しまっせ、となる。

「安さで勝負」する企業が多い(出典:ゲッティイメージス)

 では、その皺寄せはどこにいくのかというともちろん、従業員だ。最低賃金でもアットホームな職場なら文句ひとつ言わずに働く、精神論と人情でサービス残業をしてくれるような「低賃金労働者」が必要不可欠なのだ。

 このような背景を見ていくと、「安いニッポン」という問題は、「デフレだから」とか「小泉・竹中が戦犯だ」というような話だけが原因ではないことが分かっていただけるはずだ。

 実は「あらゆるものが多すぎる」という日本独自の産業構造も無関係ではない。人口が増えていた時代は、この産業構造がうまく機能した。世界一外食があふれても、サラリーマンが毎晩、飲みニケーションをしてくれたので繁華街も潤った。残業は過労死ラインを越えるのが当たり前で、上司からの「一杯行くか」は断れないのが常識だった。

 しかし、時代が変わった。人口減少で消費も鈍化し、働き方も、お酒の飲み方も30年前から激変している。ならば、これまでの常識もすべて変えるのが筋だ。

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