右も左も分からない高卒の若者は、教育次第で、低賃金でも喜んで社長のために命を投げ出す、「従順な社畜」に仕立て上げられる。大学を出て下手に知恵がついている大卒より「洗脳」しやすいというわけだ。多くの企業カルチャーが戦前にルーツにあるように、「やりがい搾取」で社員を低賃金でコキ使う「ブラック企業」も、既に戦前に誕生していたというわけだ。
日本の企業、雇用、働き方などのカルチャーは戦前からほとんど変わっていない。海外ではほとんど見られない「上司との飲みニケーション」や「忘年会・新年会」も既に戦前からある。定時出社、殺人的な通勤電車も同様だ。
そう考えていくと、われわれに「働き方改革」だとか「ダイバーシティ」を実現するというのははなから無理な話ではないか、という気もしてしまう。どんなことでも90年以上も続いた慣習、常識を変えることは並大抵のことではないからだ。
例えば、いくら厚労省などが、選考の現場で面接官が「愛読書は?」という質問をしてはいけない、と呼びかけたところで、このような質問が日本の採用現場から消えることはない。
ネットやSNSで文句を言っている人がたくさんいるように、「実際に働いたことのない学生が、使いものになるかどうかを判断するのは、限られた時間の中で、さまざまな質問をして“人となり”を探るしかない」という考えが根強い。面接官自身も新卒時にそのような質問をされてきたし、その上司や経営陣もされてきたので、いまさら就職差別と言われてもまったくピンとこない。だから、変える気も起きない。90年以上続けられてきたことを変えるのは、かなりの決意、エネルギーを要するものなのだ。
では、どうすればいいか。「人の意識」はそう簡単に変わらないが、システムというのは政治がリーダーシップを発揮すれば、ガラリと変えられる。そうして少しずつ「人の意識」を変えていくしかない。
なぜ高卒や大卒に「趣味は?」とか「頑張った部活動は?」という仕事と直接結びつかない質問をしなくてはいけないのかというと、実務経験がないからだ。ならば、実務経験を持たせればいい。バイトやインターンという就労経験を選考で重視するような制度をつくればいいのだ。
「バカバカしい」とあきれる声も多いだろうが、世界的にはそのような考え方が驚かれる。経済協力開発機構(OECD)の国際学力調査「PISA 2015」によれば、日本の15歳生徒のアルバイト実施率は8.1%で、調査対象の57カ国・地域の中で2番目に低い。
「子どもが勉強に集中できる、それだけ豊かな国なのだ」と胸を張る人も多いだろうが、先進国の子どもたちもかなりバイトに勤しんでいる。米国は30.4%、ニュージーランド36%、デンマーク33%、英国23.1%、ドイツも17.9%だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング