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» 2021年11月16日 09時53分 公開

「愛読書は?」と質問する不毛な新卒採用を、日本人が始めてしまったワケスピン経済の歩き方(2/6 ページ)

[窪田順生,ITmedia]

えっ、そんなことも聞くの?

 共産主義に傾倒していたり、労働運動・学生運動をしていた学生を採用して、社内でシンパを増やしたり、政治活動でもされたら、経営者としてはたまったものではない。そこで、趣味や特技などを介して遠回しに「人となり」を探っていた名残で、それが現在も残っているというのだ。

 実際、それがうかがえるような話もある。1935年(昭和10年)に発行された、今の高校新卒にあたる若者たちの就職活動について調べた『中等学校学生と就職の実際. 昭和11年版 就職問題研究会 編纂』にはこんな記述がある。

 『思想関係も亦随分重要視されてゐる。之れは最近に於て著しい。例の銀行ギャング事件以来銀行方面では却々やかましい。然し、短時間の面会位で就職志願者の思想を完全に看破することは容易なことではないが、本人の思想を知る為に作文を書かせたり、或は短刀直入に質問して居る所もある』

 ここでいう「銀行ギャング事件」とは、1937年(昭和7年)に東京都大森で発生した、日本共産党員による銀行強盗事件。いわゆる、赤色ギャング事件だ。共産党側はでっち上げだと主張しているが当時はこの事件で、共産党員は企業にとって非常に大きな脅威となっていたのだ。

 「なるほど、趣味や特技は聞くのは、政治活動や内部のテロから会社を守るための知恵だったのか」と納得される方も多いかもしれないが、歴史を振り返るとそれだけとも限らないのだ。例えば、戦前の就活ハウツー本『就職必携 : 学生諸君に贈る知識. 1937年版』(著・穴田秀男/千倉書房)には、昭和11年度の三菱重工の「口頭試験」、現代でいうところの面接の要項が掲載されている。

(1)経済言論は如何なる者を読んで居るか

(2)土曜、日曜の生活方法

(3)自己の長所短所に就いて

(4)学費に就いて(出所、送金高、使用先)

(5)小学校、中学校の成績について

(6)現代に於ける崇拝せる実業家

(7)購買雑誌の種類及び主として読むべき個所 著者名

(8)カフェーの出入の有無。如何なる時に、興味の程度

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