#SHIFT

いい忘年会・悪い忘年会 まだまだ「忘年会賛成派」がいなくならない理由「酒頼み」のコミュニケーションでいいのか(2/3 ページ)

» 2021年12月09日 05時00分 公開
[新田龍ITmedia]

 賛成派が提示する忘年会のメリットは、次のようなものだ。

  • 普段あまり話さない人と話すチャンス
  • 組織内の話題についていけるようになる
  • 上司や評価者に知られ、顔を売る機会になる
  • 上司や評価者の人間性や考え方に触れられる
  • 幹事をやることで段取り力が鍛えられる

 つまり、組織内コミュニケーションの円滑化や、場合によっては自分自身のメリットにもつながるというわけだ。確かに、人事も評価も人のやることであるから、忘年会のような場で上司や評価者と接することで彼らの考えに触れれば「組織内で評価されるポイント」も把握でき、結果的に評価や昇進を得やすくなる、という構図はあり得るだろう。従って、「自身の実績だけでPRできるほどの圧倒的な優秀社員でない限り、忘年会に参加して顔を売っておくメリットはある」という主張も一理ある。

賛成派は、どんな忘年会をしているのか

 ただ、こうした忘年会賛成派の意見を注視していくと、「忘年会嫌悪派」ともいうべき人々のイメージする忘年会と、全く違うスタイルの忘年会を実施していることが分かった。

 肯定派の意見をまとめると、彼らが実施している忘年会は次のようなものとなる。

  • 完全自由参加。会社行事として参加必須の場合でも残業代支給
  • 段取りや仕切りは会社側(専任チームもしくは管理職)で実施参加者側の一般社員は純粋に飲食と会話を楽しむことに専念できる
  • 従業員の慰労目的のため、もてなすのは会社(上司)側。飲酒や芸の強要は一切なく、むしろ上司側が部下にお酌して回ったりする
  • 費用は会社持ち。普段自腹ではいけないような高級店で開催されることも
  • 終電を逃した場合には、宿泊費やタクシー代を支給することも

 そう、肯定派と嫌悪派とでは、全く違う忘年会を体験しているのである。「社員の慰労」とか「若手とコミュニケーションをとるチャンス」などといいながら上司がふんぞり返ってお酌を受けている多くの会社とは異なり、肯定派における忘年会とは「良い雰囲気の職場」の延長線上にあったのである。

忘年会は「絶対悪」か

 つまり、忘年会そのものが悪いのではなく、あくまで旧態依然とした忘年会スタイルを貫く企業の体質が悪いのだといえる。

 コロナ禍以降、組織内のコミュニケーションにまつわる課題感が大いに議論される流れとなっているが、その中で、「テレワークやオンライン会議では部下とうまくコミュニケーションが取れない」と文句をいう管理職をよく目にする。ただ、よくよく普段の仕事ぶりを見てみれば「常日頃からコミュニケーションの質も量も足りず、結果的に部下との信頼関係が築けていなかった」というケースも多い。

 コミュニケーションを問題視するなら、まずその前時代的なコミュニケーションスタイルから改善すべきでは、というわけだ。同様に、職場の忘年会を組織内コミュニケーションの円滑化に寄与させるためには、従来のスタイルを改めなくてはならない。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.