改正資金決済法で、銀行以外でも提供できるようになったサービスとは認可には何が必要?(2/3 ページ)

» 2021年12月21日 08時00分 公開
[BUSINESS LAWYERS]

2-2.第一種資金移動業を営むために必要な「認可」と「業務実施計画」

 第一種資金移動業に関しては、「資金移動業者は、第一種資金移動業を営もうとするときは、…業務実施計画を定め、内閣府令で定めるところにより、内閣総理大臣の認可を受けなければならない」ものとされています(資金決済法40条の2第1項柱書)(太字筆者)。

 これは、送金サービスに関する金額上限が緩和される一方で、そのサービスの適正性などを確認するために、一般的な資金移動業よりも慎重な法制度を用意したものと評価できます(一般的な資金移動業においては「登録」だけで足りるものとされていますが、第一種資金移動業においては、それに加えてより厳しい「認可」を得る必要があるという仕組みです。)。そのため、新たな高額送金サービスを検討する場合、業務実施計画を定めることが求められます。

 業務実施計画に記載すべき事項は、以下の通りです(資金決済法40条の2第1項各号および資金移動業に関する内閣府令9条の3各号をベースに、筆者にて加筆修正したもの)。

業務実施計画に記載すべき事項

  • (1)為替取引により移動させる資金の額の上限額を定める場合にあっては、当該上限額
  • (2)為替取引を行うために使用する電子情報処理組織(システム体制)の管理の方法
  • (3)為替取引に係る業務の提供方法
  • (4)為替取引による資金の移動が生じる国および地域
  • (5)犯罪による収益の移転防止…およびテロリズムに対する資金供与の防止などを確保するために必要な体制(アンチマネーロンダリング体制)に関する事項
  • (6)資金決済法51条の2の規定(滞留制限)を順守するために必要な体制に関する事項
  • (7)為替取引に関する事故その他の資金移動業の適正かつ確実な遂行に支障を来す事態が発生した場合の対応に関する方針
  • (8)その他第一種資金移動業の適正かつ確実な遂行を確保するための重要な事項

 表面上は複雑な対応を要するようにも見えますが、実務上は、システム体制(2)、アンチマネーロンダリング(AML)体制(5)、滞留制限(6)などに関し、適切な事前検討を行い、想定するサービス内容を適切に記述することで対応可能であり、過度な負荷が課されるわけではありません。

 このうち、滞留制限が第一種資金移動業対応のポイントになりますので、次の項目において実務上の留意点を説明します。

3.滞留制限に関する実務上の留意点

3-1.滞留制限措置の概要

 前述の通り、第一種資金移動業には、金額上限が設けられていないことを踏まえ(高額の送金サービスが認められることと引き換えに)、厳格な滞留制限が設けられています(資金決済法51条の2各項)。

 滞留制限とは、資金移動業者の下に送金資金がとどまることにより、資金移動業者の破綻などによって利用者保護が欠けることのないように、資金移動業者の下に送金資金が滞留することを禁止または制約する規制のことです。

 具体的には、第一種資金移動業においては、滞留制限に関する措置として、資金移動業者は、以下の項目を定めることが求められています(資金移動業に関する内閣府令32条の2第1項各号)。

滞留制限に関する措置

  • (1)移動する資金の額
  • (2)資金を移動する日
  • (3)資金の移動先

 実務的には、これらの項目を定めることに加え、実際に資金が滞留しない形で送金サービスを遂行することが求められますので、第一種資金移動業においては、利用者から受け入れた送金資金の預託(送金資金を資金移動業者が自己の預金口座に保有すること)を長期間継続することは原則として困難になります。

 そのため、第一種資金移動業においては、以下のように、適する・適さない送金サービスがあるものと思われます。

・適さない送金サービスの例

資金の滞留が継続的に生じる可能性のあるアカウント設定型などの送金サービス(バリュー残高などが設定されるサービス)

・適している送金サービスの例

単発で高額の送金を引き受ける送金サービス


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