さて、そのSBIですが、北尾氏が鼻息荒く公的資金完済に向けてぶち上げているのが「地銀連合構想」です。
これは、経営状況の厳しいいわゆる「限界地銀」に資本注入を含む業務提携を実施し、商品サービス面、資金運用面、システム面から支援していこうというもので、既に地銀8行と提携関係にあります。SBIにとっては、地銀とその先にある顧客に対して大きなビジネスチャンスがあるわけですから、ボランティア事業ではなく、まごうことなき収益事業です。しかし見かけ上は、地域金融機関の経営安定化に資するという大義名分が成り立っています。
さらに、北尾氏は新生銀行が20年も前に借りた公的資金をいまだ完済していないことに対して「泥棒も同然」と称し、「SBIが経営権を握ったならば、新生銀行を地銀連合の中核金融機関に位置付けることで、公的資金を必ず返済させる」と宣言。このたびのTOBに対する正当性を帯びさせるに十分なインパクトを与えました。あとで金融庁関連として述べますが、この宣言こそ今回のTOB成立においてかなり大きな役割を果たしたといえるでしょう。
しかしながら見かけ上の大義名分や正当性の主張に着目する前に、このTOBの是非を考える上で必要だったのは、そもそもSBIが大手銀行である新生銀行の経営権を握ることにふさわしい企業であるか否かという確認ではなかったか、と個人的には思っています。
その点に関する議論が公には全くなされていないことは、いささか不十分であったと思います。具体的には、TOBの直前にSBIが実質同一企業である関連会社SBIソーシャルレンディング(SBISL)で融資モラル欠如により投資家保護を怠ったことで、金融庁から業務改善命令を受け廃業に追い込まれていることが、ほとんど議論の俎上に上がらなかったことに「問題あり」だと思うのです。(この点については、前回このテーマを取り上げた拙文に詳しいので、過去記事『風雲急の新生銀行TOB 金融庁は「モラル欠如」のSBIを認めてよいのか』をご参照ください)
SBIのやり口で気になる点はまだ他にもあります。
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