五輪目前の北京でオミクロン市中感染、トヨタ、VWなど自動車工場も停止続く浦上早苗「中国式ニューエコノミー」(3/4 ページ)

» 2022年01月20日 12時00分 公開
[浦上早苗ITmedia]

国際郵便まで警戒

 中国が本当の意味でかつてない“非常事態”に突入したのは、オミクロン株の市中感染が国内で初めて確認された1月8日だろう。

 天津で見つかったオミクロン感染者2人はいずれも過去2週間市外に出ておらず、職場や学校など決まったエリアで生活していた。2人は面識はないもの行動範囲が近く、そのエリアで感染がある程度広がっていることは明らかだった。

 東京や大阪で感染が拡大する日本と違い、中国はコロナ禍初期から首都の北京防衛を最優先した。これまで感染が広がった地域はいずれも北京から離れた地方都市だったが、天津は北京と隣接し、人の往来も多い。

 北京冬季五輪まで1カ月を切ったタイミングで、天津でオミクロン株の市中感染を許したことは、中国にとって痛恨の“エラー”にほかならなかった。

 天津は17日までに約1400万人の全市民検査を終え、感染者は460人に広がった。そして15日、今度は北京でオミクロン株の感染者が見つかり、濃厚接触者2人もその後感染が確認された。

 北京、天津ともにオミクロン株の感染源は特定されていない。これも中国では珍しいことだ。西安の年末のクラスターはパキスタンからの航空機によって持ち込まれたことが判明するなど、中国当局はこれまで執念の行動追跡で感染源をほぼ特定し、関係者の検査と隔離を徹底してきた。

 北京当局は17日、オミクロン株に感染した女性が時々仕事で国際郵便を受け取っていたことから「国際郵便が感染源の可能性も否定できない」と発表し、郵便が届いたビルを封鎖して消毒したが、それも気休めに過ぎない。

 これまでゼロコロナを徹底してきた政府として、人流を増やして感染が広がるのは看過できず、同日に五輪チケットの一般販売を取りやめ、観戦者を団体の招待客に限定することが発表された。

北京冬季五輪の大会組織委員会は1月17日、五輪チケットの一般販売取りやめを発表した

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