実は、このような長期休暇制度(サバティカル休暇)を、10年近く前にいち早く取り入れたのがヤフーです。
対象は、勤続10年以上の正社員。3カ月まで取得でき、有給休暇を組み合わせることも可能で、「休暇支援金」として基本給与の1カ月分が支給されます。既に多くの社員が取得しており、留学をしたり、海外旅行に出かけたり、家族と過ごす時間にしたり、副業を始めたりする人たちも。
ソニーでも、2015年に「フレキシブルキャリア休職制度」を導入し、配偶者の転勤に同行するために休職する場合は、最長5年の休職が可能で、資格や専門スキルを身に付け、自身の専門性を深める場合は、最長2年間休むことができます。どちらも給与は出ませんが、私費修学の場合は、最大50万円まで会社が実費を負担しています。
いずれの長期休暇にも、いったん立ち止まって「自身のキャリアを見つめる時間にしてほしい」という会社側の思いが込められています。
会社側も、その結果、転職をしてしまう社員もいるかもしれないことも分かっている。しかし、社員を失うリスクより、メリットの方が大きいと考えるからこその長期休暇なのです。
社員に「休む権利」を与え、会社の日常から離れれば、きっと自分で今後について考えるようになるだろう。考えることができれば、きっと自分で学ぼうとするに違いない。会社という閉ざされた世界から離れ、社会の一員としての日常を過ごすことで、きっと成長する。
──そんな期待を会社はしているのです。長期休暇は、働く人たちに求められる「生産性を向上」させるために必要不可欠な「権利」であると、会社が考えているということなのでしょう。
日本では長期休暇は、ごく一部の企業しか取り入れていませんが、欧州ではサバティカル休暇は当たり前ですし、ドイツでは就職する前に「ギャップイヤー」と呼ばれる、「好きなことをやる休み」を取るのが一般的です。
企業は、ギャップイヤーを過ごす中で身に付く文化的要素や、多くの人たちと触れ合う中で育まれる協調性や社会性、能動的に動くことで身に付く自立した人間としての成長を期待しています。
さらには、日々の時間やスケジュールを管理する能力、心身の健康を大切にする習慣などの、いわば「人間力」とも言える力を若いうちに高めることが、社会に出てからも重要だという共通認識が浸透している。
つまり、こうした国々では「一度立ち止まって、自分のことを考える」ことの大切さが、人々に共有されているのです。
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