最大の懸念は「年金」だろう。現在、およそ200兆円の年金積立金がGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)で運用されている。そのうち国内債券と国内株式が占める割合はおよそ50%、約100兆円もの年金資金が国内の金融市場に投下されている。
GPIFの年金運用については、20年のコロナショックや15年のチャイナショックといった短期的な暴落と一時的な運用益の減少がセンセーショナルに報じられやすい。そのため、今回の岸田ショックも「運用益は減ったが、それでも累計の収益はプラスである」という、通り一辺倒の「ずれた擁護」が発生しやすいと考えられる。
しかし、岸田ショックは、コロナウィルスという自然災害やバブル崩壊のような群集心理と違って、コントロール不能な事象ではない首相自身の発言が発端となっている点が異なる。ということは岸田ショックによるGPIFの運用益減少は、「本来コントロールできていた事象で将来の年金積立金に逸失利益を生じさせ、ひいては年金にダメージを与えた」といって差し支えないのではないか。
岸田氏をあらわす言葉として、“聞く姿勢”という特徴がよく挙げられる。しかし、18日に実施された金融審議会作業部会では、「投機を助長している」として岸田文雄首相が掲げた「四半期開示制度の廃止」に有識者は誰も賛成しなかった。部会で審議される前にしっかりと聞いておけば、誰も賛同しない奇抜な提案は上程されなかっただろう。
今岸田氏に必要なのは、まさに自分が得意と自認する「聞くこと」、市場との対話であろう。
中央大学法学部卒業後、Finatextに入社し、グループ証券会社スマートプラスの設立やアプリケーションの企画開発を行った。現在はFinatextのサービスディレクターとして勤務し、法人向けのサービス企画を行う傍ら、オコスモの代表としてメディア記事の執筆・監修を手掛けている。
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