ネコを広報課長に起用 大阪の老舗・中小企業が編み出したSNS発信戦略防災業界のアップデート目指す(1/2 ページ)

» 2022年05月21日 08時00分 公開
[濱川太一ITmedia]

 大阪で防災設備業を営む中小企業のSNS投稿が、多くのユーザーの心をつかんでいる。昨年、創業60年を迎えた青木防災(大阪市平野区)。広報課長に起用したネコのタマスケが人気を博し、フォロワー数は3万6000人を超える。「防災業界のインフルエンサー」の異名を持つ同社に、情報発信の極意、そして、発信に込める「防災のプロ」としての思いを聞いた。

青木防災のSNS発信が多くの人の心をくすぐる(提供:青木防災、以下同)

 「法外な量のオヤツを不正に受け取っていたか」――。4月、同社のツイートが多くのユーザーの笑いを呼んだ。ペットとして飼うネコのタマスケが、客から大量のオヤツを受け取っていたとして、「収賄の疑いで逮捕」されたという内容だ。報道番組を模したデザイン加工が実際のニュースさながらの臨場感を醸し、さらに笑いを誘う。

 情報発信を担当するのは、同社マーケティング部の青木俊輔さん(32)。当初は「消火栓の前に物を置かないで」といったような消防に関する注意喚起を中心に投稿しており、明確な発信戦略は持っていなかったという。

ネコをきっかけに会社を知ってもらう

 転機は2019年3月。遊び心から「引き出しの奥にネコが入り込む恐れがあるので注意してください」と動画を添えて投稿すると、「かわいすぎる」「ネコがいる職場うらやましい」などと大きな反響を呼んだ。

 さらに話題性を高めるため、タマスケを広報課長に起用し、その日常を投稿すると、フォロワーの数はうなぎ上りに増えた。

 「ネコをきっかけに、防災を手がける企業として知ってもらう流れを作ることができました」と青木さんは振り返る。

 タマスケは現在7歳。同社の旧社屋ガレージで野良ネコが出産し、子ネコを含めどこかに消えていなくなったが、1匹だけガレージに残り続けたのがタマスケだった。会社で飼い始め、「子ネコのうちから事務所入りした」(青木さん)。

 人見知りな性格だというが、お気に入りの社員には歩み寄り、腕を枕にして眠ることも。腕を枕にされた従業員は身動きが取れない。青木さんはこれを「腕を押さえつけるなどの帰宅妨害」と冗談を交えたニュースに仕立て投稿。英訳も用意して投稿し、海外からの反響も呼び寄せた。

警備担当のハナコ。業界ナンバー1の警備用番犬を目指す

 なお、同社には“警備”を担うイヌのハナコもいる。タマスケのような人見知りではないが、社員に近寄って添い寝をすることはなく、人との距離感を保つ性格だという。業界ナンバー1の警備用番犬を目指している。

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