「全社でDXやっています」と答えざるを得ない、日本企業の“罪な構造”IPA×ITmedia DX対談企画(第1回)(3/4 ページ)

» 2022年06月01日 07時00分 公開
[ITmedia]

内野 仮にCDOがいて、デジタル推進室のような専門組織をけん引しても、結局PoC(概念実証)以上の成果がなかなか出ないとかですね。スモールスタートはできるんですが、結局全社には波及しない。やっぱり経営層のバックアップが足りていないことも大きいと思います。自社を知り抜いている生え抜きのCDOが育つと強いのでしょうけれど。

 生え抜きのCDOは、確かに難しいですよね。定着してくれないのはなぜでしょう? “デジタル小間使い”じゃないですけれど、「俺たちの言う通りにやりなさい」と社内で扱われたんじゃないのかなと思います。

photo 写真はイメージです(提供:ゲッティイメージズ)

内野 同感です。ITが経営と分断されているという話が出ましたが、外から来たCDOも経営本体から分断されがちな傾向があるのかもしれません。これは最近、キーワードになっている内製化支援についても共通点があると思います。結局、社外からやって来た人が、プロジェクトをリードするとはいっても、あくまで主体は企業です。主体たる企業側がどういう方向に向かいたいのか、何をしたいのかという強い意志があれば、そういったプロもうまく経営や組織にとりこめるし、ノウハウも残っていくと思うんです。

 ところが慣習の呪縛じゃないですけれども、丸投げのようにして、そういった人たちに仕事を“依頼”してしまうので、結局、思うような成果は出ず、知見やスキルも残りにくい。主体性の有無が強く影響すると思います。

 まず一番大事なことは、何を改善したいかというのがきちんとあるか、という話ですよね。ですが、それでも十分ではなくて、社長が「ここはこうしてほしい」と、社外からやってきたデジタル担当に放り投げておしまいにするのも問題です。

 企業にはいつも課題がありますが、その中からデジタル担当も一緒に課題を選んで、「デジタルを活用して、こうやっていきましょう」と対話できて初めて、企業の改善につながりますし、社外から入ってくる人材のやりがいにもうまく結び付くと思うんです。けれども、課題が大事というのが暴走し、生え抜きの経営陣が単に自分の気持ちで「こうだ」と思うものを丸投げ、押しつけをしてしまう形になると、狙いとは違うことになると思っています。

内野 そうですよね。また、課題の設定もなかなか難しいところですね。技術の人は技術の観点から、ビジネスの人はビジネスの観点から話すため、すれ違いが起こりやすい。何らかの共通言語を作った上で話ができると、有効だと思うんですよね。例えば分かりやすいところで言うと、アプリケーションパフォーマンスマネジメントもその一つになり得るのではと思います。

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