楽天証券の楽天キャッシュ決済、積立額上限が合計10万円に増えたワケ金融ディスラプション(1/2 ページ)

» 2022年06月29日 07時00分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 楽天証券が新たに開始した電子マネー楽天キャッシュを使った投資信託の積立サービス「楽天キャッシュ決済」。このサービスはどんな経緯でスタートしたのか? その狙いは何だったのか。

 「コロナ禍の前くらいから、新たな取り組みを進めたい、という議論がスタートしました」。そう話すのは、楽天キャッシュ決済の設計やマーケティングに携わった楽天証券マーケティング企画部の大津璃奈リーダーだ。

楽天キャッシュ決済を担当した楽天証券のメンバー。左から楽天証券マーケティング企画部の大津璃奈リーダー、アセットビジネス事業部の山口佳子リーダー、UIUXを設計した楽天証券アセットビジネス事業部の横山英恵マネージャー

 楽天証券でクレジットカードを使った投信積立(クレカ積立)が始まったのが2018年10月。そこから4年弱で、クレカ積立は楽天証券の新規会員増を牽引する武器になった。800万を超える同社のユーザーのうち、クレカ積立を行うユーザーは200万人を超えている(5月時点、記事参照)。

 そんな中ユーザーから増えてきたのが、5万円というクレカ積立の制限を増やしてほしいという声だ。「より多い金額をキャッシュレスで手軽に投資したい」(大津氏)という狙いで、電子マネーである楽天キャッシュに白羽の矢がたった。

 折しも、クレカ積立の事業モデルが、想定以上の信託報酬低下で成り立たなくなってきたタイミングだ(記事参照)。クレカ積立のポイント還元率を改定し引き下げるのと時を合わせて、楽天キャッシュ決済による、投信積立がスタートすることになる。

「証券会社が借金をして投資させることの禁止」の例外

 そもそもクレカ積立が月間5万円に制限されているのはなぜか。まず金融商品取引法では、投資家の保護を目的とし、証券会社が借金をして投資させることを禁じている。投資家が自分で借金をして投資するのは自己責任だが、証券会社がそれを促すような行為はダメだということだ。

 例えば、野村證券では保有株を担保として借り入れが可能だが、この際、野村證券取り扱いの有価証券の購入資金などには利用できない旨、注意書きがされている。

金融商品取引法

(その他業務に係る禁止行為)

第四十四条の二 金融商品取引業者又はその役員若しくは使用人は、金融商品取引業及びこれに付随する業務以外の業務(第二号及び第三号において「金融商品取引業者その他業務」という。)を行う場合には、次に掲げる行為をしてはならない。

  • 一 第百五十六条の二十四第一項に規定する信用取引以外の方法による金銭の貸付けその他信用の供与をすることを条件として有価証券の売買の受託等(委託等を受けることをいう。以下同じ。)をする行為(投資者の保護に欠けるおそれが少ないと認められるものとして内閣府令で定めるものを除く。)

 ただしこれには除外条件があって、「投資家の保護に欠けるおそれが少ないと認められるものとして内閣府令で定めるものを除く」とされている。そこで内閣府令を見ると、除外となる条件が記載されている。

金融商品取引業等に関する内閣府令

(金融商品取引業者における信用の供与を条件とした有価証券の売買の受託等の禁止の例外)

第百四十八条 法第四十四条の二第一項第一号に規定する内閣府令で定めるものは、信用の供与をすることを条件として有価証券の売買の受託等をする行為のうち、次に掲げる要件の全てを満たすものとする。

  • 一 証票等(証票その他の物又は番号、記号その他の符号をいう。次条第一号イ、第百四十九条の二第一号イ、第百五十条第一号イ及び第二百七十四条第一号において同じ。)を提示し、又は通知した個人から有価証券の売買の受託等をする行為であって、当該個人が当該有価証券の対価に相当する額を二月未満の期間内に一括して支払い、当該額が金融商品取引業者(有価証券等管理業務を行う者に限る。第三号において同じ。)に交付されること。
  • 二 同一人に対する信用の供与が十万円を超えることとならないこと。
  • 三 当該有価証券の売買が累積投資契約(金融商品取引業者が顧客から金銭を預かり、当該金銭を対価としてあらかじめ定めた期日において当該顧客に有価証券を継続的に売り付ける契約であって、次に掲げる要件の全てを満たすものをいう。)によるものであること。
  • イ 有価証券の買付けの方法として、当該有価証券の種類及び買付けのための預り金の充当方法を定めていること。
  • ロ 預り金の管理の方法として、顧客からの払込金及び顧客が寄託している有価証券の果実並びに償還金の受入れに基づいて発生した金融商品取引業者の預り金を累積投資預り金として他の預り金と区分して経理することを定めていること。
  • ハ 他の顧客又は金融商品取引業者と共同で買い付ける場合には、顧客が買い付けた有価証券につき回記号及び番号が特定されたときに、当該顧客が単独で当該有価証券の所有権を有することが確定することを定めていること。
  • ニ 有価証券の管理の方法として、預託を受けた有価証券(金融商品取引業者と顧客が共有しているものに限る。)が他の有価証券と分別して管理されるものであること。
  • ホ 顧客から申出があったときには解約するものであること。

 クレジットカードと明記はないが、基本的にクレジットカードを念頭においたもので、「2カ月間未満に一括して支払うこと」つまり分割払いは利用できないとか、「10万円を超えることとならない」とか、「継続的に売りつける契約」つまり積立であること、また「顧客から申し出があったときには解約」できることなどが定められている。

 「お客さまにリスクを負わせ過ぎてはいけないが、累積投資契約という積立なら、相場環境によらない投資継続という観点で投機的にならないという考え方が背景にある」と楽天証券のアセットビジネス事業本部長の由井秀和常務執行役員は言う。

 ちなみに、なぜ法令の上限が10万円なのに、積立上限が5万円なのかというと、クレジットカードではカード支払いの引き落としができなかった場合にも翌月分の買い付けは自動的に実施される可能性があり、信用供与という意味では結果的に2カ月分の10万円が一時的に貸し付けられる可能性があることを防ぐためだ。

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