楽天証券が新たに開始した電子マネー楽天キャッシュを使った投資信託の積立サービス「楽天キャッシュ決済」。このサービスはどんな経緯でスタートしたのか? その狙いは何だったのか。
「コロナ禍の前くらいから、新たな取り組みを進めたい、という議論がスタートしました」。そう話すのは、楽天キャッシュ決済の設計やマーケティングに携わった楽天証券マーケティング企画部の大津璃奈リーダーだ。
楽天証券でクレジットカードを使った投信積立(クレカ積立)が始まったのが2018年10月。そこから4年弱で、クレカ積立は楽天証券の新規会員増を牽引する武器になった。800万を超える同社のユーザーのうち、クレカ積立を行うユーザーは200万人を超えている(5月時点、記事参照)。
そんな中ユーザーから増えてきたのが、5万円というクレカ積立の制限を増やしてほしいという声だ。「より多い金額をキャッシュレスで手軽に投資したい」(大津氏)という狙いで、電子マネーである楽天キャッシュに白羽の矢がたった。
折しも、クレカ積立の事業モデルが、想定以上の信託報酬低下で成り立たなくなってきたタイミングだ(記事参照)。クレカ積立のポイント還元率を改定し引き下げるのと時を合わせて、楽天キャッシュ決済による、投信積立がスタートすることになる。
そもそもクレカ積立が月間5万円に制限されているのはなぜか。まず金融商品取引法では、投資家の保護を目的とし、証券会社が借金をして投資させることを禁じている。投資家が自分で借金をして投資するのは自己責任だが、証券会社がそれを促すような行為はダメだということだ。
例えば、野村證券では保有株を担保として借り入れが可能だが、この際、野村證券取り扱いの有価証券の購入資金などには利用できない旨、注意書きがされている。
(その他業務に係る禁止行為)
ただしこれには除外条件があって、「投資家の保護に欠けるおそれが少ないと認められるものとして内閣府令で定めるものを除く」とされている。そこで内閣府令を見ると、除外となる条件が記載されている。
(金融商品取引業者における信用の供与を条件とした有価証券の売買の受託等の禁止の例外)
クレジットカードと明記はないが、基本的にクレジットカードを念頭においたもので、「2カ月間未満に一括して支払うこと」つまり分割払いは利用できないとか、「10万円を超えることとならない」とか、「継続的に売りつける契約」つまり積立であること、また「顧客から申し出があったときには解約」できることなどが定められている。
「お客さまにリスクを負わせ過ぎてはいけないが、累積投資契約という積立なら、相場環境によらない投資継続という観点で投機的にならないという考え方が背景にある」と楽天証券のアセットビジネス事業本部長の由井秀和常務執行役員は言う。
ちなみに、なぜ法令の上限が10万円なのに、積立上限が5万円なのかというと、クレジットカードではカード支払いの引き落としができなかった場合にも翌月分の買い付けは自動的に実施される可能性があり、信用供与という意味では結果的に2カ月分の10万円が一時的に貸し付けられる可能性があることを防ぐためだ。
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