鉄道会社といっても、鉄道事業だけでグループ経営を成り立たせている企業はめったにない。鉄道事業と関連事業を組み合わせて総合的に売り上げや利益を伸ばす戦略をとるところがほとんどである。特に私鉄は、グループ全体での総合ビジネスを追求してきた。
鉄道の「走り」が支持される京急電鉄も、そのスタイルでビジネスを成立している。
2022年3月期の有価証券報告書を見てみよう。京急電鉄は、グループ全体では交通事業で収益を稼ぎ、全体のうちおよそ29%を獲得している。862億6100万円の交通事業での収益のうち、鉄道事業は581億5700万円、バス事業は231億700万円、タクシー事業は29億7100万円だ。交通関連では鉄道事業の存在が大きい。
しかし不動産販売業は620億6900万円と鉄道事業以上の存在感を見せ、流通事業ではストア事業が530億7100万円と規模の大きさを示している。京急グループでは「京急ストア」があるだけではなく、「マツモトキヨシ」や「業務スーパー」のフランチャイズも経営している。
鉄道そのものの存在感が強い京急電鉄でも、交通事業での収益は全体の3分の1を切っているのだ。それでも、ほかの私鉄よりは鉄道そのものに注目が集まる。
一方、交通事業にかかわる従業員は5637人と、全体の63%を占める。流通事業は非正規雇用が多く従業員数に入っておらず、不動産事業は全体の26%の収益を4%の人員で稼ぎ出す状況になっている。
京急電鉄のさまざまな鉄道についての「こだわり」も、この不動産事業の収益力によって成り立っているといえるだろう。一方、鉄道事業なしで不動産事業やストア事業が成り立つか、というのも疑問である。
それでもおそらく、私鉄では鉄道事業の存在感が高いグループといえる。
では、「沿線ビジネス」を最初に開発し、そのビジネスが住民に支持されている阪急阪神HD、特に阪急電鉄はどうなのだろうか?
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