それにしても、なぜこのような店をオープンしたのだろうか。運営しているGYRO HOLDINGS(東京都新宿区)で広報を担当している設樂碧里さんに話を聞いたところ、「ディズニーランドのようなエンターテインメントの要素がたくさん詰まったレストランを運営することはできないか。当時、そのようなことを考えていて、ほかにはない店を構えました」とのこと。
入口で「逮捕」して、「監獄」に連行していく流れは変わっていないが、オープン当初はより「怖さ」を追求していたようで。とにかく驚かすことにチカラを入れていて、店内の雰囲気、食事、モンスターショーなど、どれをとっても「おどろおどろしいものばかりでした」(設樂さん)。「監獄レストラン」という看板を掲げているのに、客に「それほどでもないね」「怖くなかったよ」と思われたくない。店のコンセプトを守り抜くために、これでもかこれでもかといった感じで恐怖を与え続けていたのだ。
しかし、それも時代の流れとともに変化していく。例えば、モンスターショー。2時間に1回ほどのペースで行われるわけだが、店内を徘徊(はいかい)するモンスターが“優しく”なっていったのだ。見た目は怖いままだが、客に手を振ったり、ハイタッチをしたり、肩を組んだりして、一緒に写真を撮る。お化け屋敷に出てきそうな怪物を演じるだけでなく、ちょっぴり笑ってもらうことにもチカラを入れていくようになったのだ。
それにしても、なぜモンスターは優しくなったのだろうか。その背景に「スマートフォン」の存在があったのだ。スマホが普及する前のロックアップは、ベールに包まれていた。店内はどのような雰囲気になっているのか、スタッフはどのような口調なのか、モンスターはどのくらい怖いのかなど、よく分からないことがたくさんあったのだ。ということもあって、店の前まで来たものの、「やっぱやめる」といった具合に、そのまま帰ってしまう客もいた。
しかし、客がスマホを持つようになって、どのようなことが起きたのか。動画と写真である。店内をどんどん撮影していって、料理もパシャパシャ撮って、モンスターがでてきたら録画をして。店内は怖さを演出するために、照明を暗くしていたが、それだと写真を撮影することが難しい。
ということもあって、映える写真をアップしてもらうために、照明をやや明るくすることに。そうした写真や動画を見た人は「なんかおもしろそうだなあ」「ちょっと行ってみようか」となって、来店客がどんどん増えていったそうだ。
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