このトークンを、法定通貨や仮想通貨ではなく、交換できる場や対象を限定した小さな経済圏をつくることを目的にしたのが、「トークンエコノミー」と呼ばれている新しいビジネスの場だ。
トークンエコノミーの世界では、事業者が独自のトークンを発行することができる。トークンを活用して資金を集めるのもよし、マーケティングの一環としてファンとのコミュニケーション強化に活用するのもよし。ユーザーの声を丹念に集めて商品開発に生かすことも考えられる。そして、そのトークンを利用する人が増えるほど、「トークンエコノミー」は大きくなっていく。つまり、うまく設計・構築・運用することができれば、新たなビジネス展開が期待できるということになる。
前述したJリーグ以外でも、様々な活用方法があるだろう。たとえばその地域の活性化を狙い、限定の商店街だけで使える「プレミアムつき商品券」を自治体か商店街でトークンを発行するケースで考えてみよう。消費者が「プレミアムつき商品券」を購入すれば、当然プレミアム分の得な買い物をすることができる。商品券の交換や譲渡が可能なら、使いたい人が使うことができ、企画次第だが、結果的にプレミアム以上の結果になることもあるだろう。電子決済の普及にも一役買うかもしれない。さらに、そのトークンには、商店街のイベント企画への参加権やプレゼント応募、さらには1日店長権など、様々な企画を練りこめば、商店街の活性化に貢献する可能性もある。
Webサイトの活性化にも大きな効果がありそうだ。企業は、あの手この手を使って商品レビューやコメントを欲しがり、様々な仕掛けを行っている。ユーザーに報酬を提供するためには、これまではクオカードなどの金券をプレゼントするなどの方法を取らざるを得なかったが、コメントに対してトークンを付与したり、そのコメントに「いいね」した人にもトークンによってメリットがあるような仕組みをつくったりすれば、波及効果もありそうだ。また、NFT(Non-Fungible Token)によって、新たなデジタルコンテンツの販売というビジネスチャンスも広がるかもしれない。
技術的な背景は置いておくとして、これまでなかなか価格転嫁しにくかったこと、プロスポーツであればチームへ直接意見が言える機会や選手と会話できる機会、WebサイトであればコメントやQ&Aへの参加などにトークンという新たな価値を提供できれば、これまでとは異なるマーケティング施策が可能になりそうだ。
また、トークンエコノミーでは、株式をデジタルトークンとして発行することによって、資金調達も可能になるという。株の発行など、小規模事業者にはほとんどできない芸当だったが、起業だけではなく個人でもやろうと思えばできる仕組みであり、起業や事業拡大がしやすくなるのは間違いないだろう。さらに、株と違い第三者が介在しないため、余計な手数料もかからない。
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