「値上げの幅が小さい」すなわち小さい金額の値上げは、良くない結果を招く場合があります。一見すると、顧客にとって望まれる形の値上げのように見えるでしょう。顧客が「1円でも安く買いたい」と思うのは当然だからです。
冒頭で紹介した「かっぱえびせん」や「サッポロポテト」といったスナック菓子や日本水産の缶詰、山崎製パンなどがこの「値上げの幅が小さい値上げ」に該当します。値上げの幅が小さいと、足元の原価率悪化に耐えられても、数カ月単位で変化する昨今の原価率には耐えることはできません。
ほとんどの場合、原材料が高騰し利益確保が厳しくなったため、原材料が上がった金額だけ値上げしよう(できるだけ値上げの幅を小さくしよう)と金額を決定しているものと考えられます。
ただ、消費者が他の商材と比べ金額に敏感になる食品や日用品を扱う消費財メーカーでは、数回の原価率悪化を見据えた大幅な値上げは難しく、現実的ではないというのが現状です。
そのため、この再値上げの波は、まさに仕方がない状況といえるのではないでしょうか。仕方がないとはいえ、短期間(数カ月スパン)での値上げが顧客にとって非常にネガティブな印象を与えるのもまた事実。まさに八方ふさがりといった状況です。
このような状況に対応するべく、値上げの波に先駆け工夫をこらして単価を上げている企業も存在しているのです。例えば、日本コカ・コーラがこれに該当します。
驚く人も多いでしょうか、おなじみの500ミリボトルは21年3月29日を境にほとんどのスーパーで販売されなくなりました。代わりに350ミリと700ミリという2サイズの新ペットボトルが販売されるようになりました。この施策の背景には顧客体験を科学したことがあります。
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