男鹿市で“オサケ特区”は実現するのか 「日本酒」参入がほぼ不可能な理由水曜日に「へえ」な話(3/4 ページ)

» 2022年09月07日 10時02分 公開
[土肥義則ITmedia]

「特区」の落としどころ

 仮に「特区」が実現したとしよう。しかし、懸念もある。既存業者からの「反対」の声だ。筆者はもちろん日本酒を造っていないが、既存業者が新規参入を恐れる気持ちも分からないわけではない。最大の理由は「過当競争」である。

 「日本酒を造るぞー」と新しい業者がたくさんやって来ると、どうなるか。日本酒の価格がどんどん安くなることが予想される。結果、自分たちの商品が売れなくなるのではないか、売り上げが減少するのではないか、という不安である。かといって、新しい人たちがたくさんやって来た、でも市場規模は変わらずで、造っている人たちが入れ替わっただけ。といった未来は、面白くない。

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 特区をつくるにしても、既存業者と共存できるような落としどころが必要になってくるのではないだろうか。この点は、岡住さんも気にしているようだ。「例えば、特区でつくった日本酒は男鹿市のみで販売するのはどうか。レストランのみで提供するのはどうか。価格を高くして、他社と競合しないようにするのはどうか。何らかの仕組みをつくって、ウインウインの関係をつくっていかなければいけない」という。

 特区を始める目的は、大きくわけて3つある。1つは、日本酒を造ること。2つめは、男鹿市で日本酒を造る人たちがたくさんやって来ること。3つめは、既存業者と対立するのではなく、業界に貢献すること。

 1つめと、3つめの話をする。日本酒をたくさん造れるようになれば、どのようなことが起きるのか。酒粕である。お酒をつくる工程でできる酒粕は、産業廃棄物として年1800トン排出されている。「この酒粕を使ってなにかできないか。もったいない」(岡住さん)と考えて、マヨネーズをつくることを計画している。

酒粕をマヨネーズに
「発酵マヨ」として発売

 卵黄の代わりに酒粕を使っているので、ヴィーガン(完全菜食主義者)やアレルギー体質の人に支持されそうである。米国の企業がすでに興味を示していて、市場に出回るのはひょっとしたら国内よりも海外のほうが速いかもしれない。

 酒粕の利用には、もうひとつ大きな可能性がある。マヨネーズがヒットすれば、酒粕が必要になる。自社の酒粕だけでは足りないとなれば、既存業者から買い取る可能性がでてくる。そうなれば、業者の収入になるので、悪い話ではない。

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