「かっぱ寿司」社長、「はま寿司」情報不正取得で逮捕→辞任 競合の現役社長が兼務で後任に、理由は?

» 2022年10月03日 21時14分 公開
[ITmedia]

 回転すしチェーン「かっぱ寿司」を運営するカッパ・クリエイトは10月3日、田邊公己(たなべ・こうき)社長が辞任すると発表した。後任には同社取締役の山角豪(やまかど・つよし)氏が同日付で就任した。田邊社長は競合の「はま寿司」の情報を不正に取得したとして、9月30日に不正競争防止法違反の疑いで逮捕され、10月3日に書類送検されていた。

photo 「かっぱ寿司」の店舗(出典:同社のプレスリリース)

 山角氏は1978年8月23日生まれの44歳。2000年のすかいらーく(現すかいらーくホールディングス)に入社後、店舗開発政策グループのディレクターなどを歴任し、22年6月にカッパ・クリエイトの取締役に就任していた。

photo 山角氏の略歴

回転すしチェーンを手掛ける企業の現役社長

 一方で、山角氏はカッパ・クリエイトと同じコロワイド(横浜市)傘下で、回転ずしチェーン「にぎりの徳兵衛」や居酒屋「甘太郎」を手がけるアトム(横浜市)の社長を20年6月から務めている現役社長。山角氏が後任に選出された背景には、コロワイド内でかっぱ寿司と同じ業態を手掛ける企業の経営者であることが要因になったとみられる。カッパ・クリエイトは「今回の就任は緊急的なもの」としており、一時的な兼務発令となる見通し。

photo コロワイドが手掛ける事業
photo アトムの事業内容(いずれも出典は公式Webサイト)

 選任について同社は「(山角氏は)フードビジネスとリスクマネジメントの両面でのスキルを持ち、経営の方向性に集中する体制で会社運営を行うことが最善と判断した」と説明。「これまでのフードビジネスにおける知見を生かし、業績向上に取り組むとともに、リスク管理体制をさらに強化する」としている。

「資本関係や取引関係はない」 “異例”の兼務に

 他社の社長が後任として“リリーフ登板”することになった今回の人事。こうした人事は珍しいのか取材すると、カッパ・クリエイト広報は「上場企業の代表取締役を兼務することは珍しいケース」とした上で「法的に許容されていないわけではない」と回答。兼務は異例の事態とみられる。山角氏が社長を務めるアトムとは「資本関係や取引関係はない」という。

 同社は21年7月、競合の「はま寿司」退職後、同社顧問に就任した経営幹部が20年11月から翌12月中旬の期間にかけて、元同僚からはま寿司の売上データなどを数回に渡って取得していたとして、当局から捜査を受けるとともに、はま寿司側から告訴されたと発表。約1年後の10月3日までに、田邊社長ら2人が不正競争防止法違反の疑いで東京地方検察庁(東京地検)の特捜部に逮捕、書類送検されたと発表した。

photo 告訴に関するプレスリリース

 同社は「関係者の皆さまに多大なるご迷惑とご心配をおかけしておりますことを深くお 詫び申し上げる」と謝罪した上で「事案の解明に向けて関係当局による捜査に全面的に応じ るとともに、役職員に対するコンプライアンス教育を継続不断の取り組みとして徹底・強化していくことなどにより再発防止に努める」とする声明を発表している。

 短期的とはいえ、山角新社長が「かっぱ寿司」を立て直せるか、その経営手腕に注目が集まりそうだ。

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