2月24日にロシアによるウクライナ侵攻で始まったいわゆる「ロシア・ウクライナ戦争」。開戦からすでに半年余りが過ぎたが、いまだ終戦の兆しが見えてこない。
この間、実にさまざまな識者たちが分析や解説を行っている。その中で個人的に最も驚かされたのは、この戦争がいわば「古いタイプ」だったことだ。領土争いや虐殺が行われ、旧式の兵器(なんと百年前のもの!)が使用され、野戦砲が主力とされている。
一方で、この戦争は2022年という21世紀の近代国家同士によって行われているものであるため、実に現代的な部分も存在している。
すでに各メディアでも取り上げられているように、トルコ製ドローン(バイラクタル2)の活躍や、緒戦におけるサイバー空間での攻防、そして実業家イーロン・マスク氏のSpaceX社がウクライナ上空から現地の人々に無料で提供している衛星通信を使ったブロードバンドサービス「スターリンク」といったものは、さながら戦場における「最新技術の見本市」の様相を呈している。
そうした中、筆者が最も注目すべき革命的なテクノロジーだと感じているのは、ウクライナ軍が使用している「クリアビューAI」(Clearview AI)という米国企業が手掛ける顔認識サービスである。
まずこの「クリアビューAI」であるが、これは米ニューヨーク州のスタートアップ企業と、同社が提供するサービスの名前である。
前述したマスク氏とともに「PayPal」(ペイパル)を創業したことで有名なピーター・ティール氏が17年に資金を提供してニューヨークで創業した会社であり、豪州出身でベトナム系のホワン・トン=タットという30代の人物が創業者として代表を務めている。
この新興企業が今回の戦争で提供しているのが「顔認識サービス」(Facial Recognition)だ。まずここではっきりさせておきたいのは、同じ英語でも「顔認証」は「積極的認識」と呼ばれ、本人同意で個人認証に使われる機能を言う。
これに対し、同社が提供するサービスは「顔認識」に該当する。これは「非積極的認識」とも呼ばれ、本人の同意なしで勝手にデータベース(DB)を利用して照会する行為だ。
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