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「残業=頑張っている」から「残業=無能」へ──変わりゆく働き方が示す、残酷な現実(1/3 ページ)

» 2022年11月04日 06時00分 公開
[溝上憲文ITmedia]

 コロナ禍以降、リモートワークやフレックスタイム、出社時の時差通勤など自由度の高い働き方が広がっている。ただし自由度が高いといっても、オフィス通勤が当たり前だった時代のように会社に残って夜遅くまでダラダラと残業することは許されなくなっている。

コロナ禍以前ほど、ダラダラと残業できない状況になっている(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

強まる残業規制 「寸止め残業」のまん延も

 残業が減った直接の背景には、2019年4月から施行された働き方改革関連法の「時間外労働の罰則付き上限規制」も影響している。原則として残業の上限は月45時間、年間360時間。労使協定を締結すれば、年間720時間以内まで可能となる。

 建設関連会社の人事部長は以下のように話す。

 「残業時間の上限規制以降、厳しくチェックするようになっている。当社では月45時間の残業が6回を超えないこと、月80時間を超えて残業しないことを徹底している。実際には上限時間を超える社員はいないが、『寸止め残業』はまん延している。各部署から提出される残業報告書に決まって44.9時間、あるいは79.5時間と書いている。毎月そんな感じだと、本当はもっと残業しているのは明らか。人事からレッドカードを出し、部署の部長を呼んで注意喚起している」

 もちろん、残業時間チェックに注力しているのはリモートワークを採用している企業でも同じだ。

 週2日以上の在宅勤務を推奨している広告関連会社の人事部長は「出社している場合はPCのログイン・ログオフの時間をベースに残業代を支給している。しかし、在宅勤務時の残業は残業した理由を記入し、それを上司が承認しないと認めないことにしている。出社時と違い、就業時間中でも仕事をしているか分からないし、ましてや本当に残業しているか分からないので厳格に運用している」と語る。

 その結果、在宅勤務時の残業時間は大きく減少したという。在宅勤務であっても長時間労働による心身の疾患が発生すれば労災事案となり、会社にとってもリスクだ。

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