なぜ、「AOKI」がひとり勝ち? 会社を救った大ヒット商品と、紳士服以外の事業長浜淳之介のトレンドアンテナ(5/6 ページ)

» 2022年12月07日 06時30分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

コナカとサマンサタバサ

 業界3位のコナカはどうか。コナカの22年9月決算は、売上高632億円(前年同期比7.8%増)、経常損失22億円(前年は65億円の損失)、最終損失32億円(前年は19億円の損失)だった。

 なお、前年とは会計処理の基準が異なるため、決算書には売上高増減のパーセンテージは記されていない。

コナカの店舗

 しかし、紳士服コナカ個別の既存店売上高を見ると通期で19.4%増。売り上げが回復基調にあることは間違いない。

 22年3月末の店舗数は、「コナカ/フタタ」192店、「SUIT SELECT」188店、「DIFFERENCE」54店となっている。なお、20年1月にコナカとフタタは合併した。

 決算書によれば、オーダースーツのDIFFERENCEが百貨店への出店を進めると共に、高級生地の取り扱いを増やした。また、コナカ、フタタ、SUIT SELECTといった量販店では、冠婚葬祭、各種イベントの再開でフォーマルウェアが好調に売り上げたとのこと。

コナカのツープライススーツ店、スーツセレクト

 コナカ、フタタでは10月22日、創業70周年を記念して1着で7通りの着こなし(スーツ、スリーピース、ビジカジ、ビジカジドレスアップ、セレモニー、ディレクターズ、ジャケットの各スタイル)が可能な「ULTLA MOVE 7WAY SUIT」を新提案。価格は8万7890円とかなり高額。伸縮性が全方位のオールストレッチ仕様、4ピーススーツで、動きやすさも魅力だ。

コナカの70周年記念企画、1着で7つのシーンに対応する「ULTLA MOVE 7WAY SUIT」(出所:プレスリリース)

 同社公式Webサイトによれば、21年9月期で、コナカ単体の売上高は287億円とのことで、グループ全体の売り上げのおよそ5割である。多角化が進んでいる。

 コナカの連結子会社には、19年に傘下入りしたバッグ・ジュエリー「サマンサタバサ」のサマンサタバサジャパンリミテッド、とんかつ「かつや」やから揚げ「からやま」などのFC事業を行うコナカエンタープライズ、洋服リフォーム「お直しピット」などを展開するアイステッチがある。さらに海外事業のKONAKA(THAILAND)もある。

サマンサタバサのバッグは2000年代に一世を風靡した(出所:プレスリリース)
サマンサタバサのバッグ

 飲食業に進出しているのは、青山、AOKIと同様で、コロナ禍でも強い和風ファストフード、アークランドサービスホールディングスの「かつや」「からやま」のFC店を中心に事業を進めている。売り上げは前年とほぼ横這いの17億円。

 さて、サマンサは個別に決算を発表していて、22年2月期の売上高254億円(前年同期比12.3%増)、経常損失25億円(前年は36億円の損失)、最終損失42億円(前年は100億円の損失)となっている。

 コナカに関しては、買収した婦人物のサマンサの不振が足を引っ張って赤字になっている。

 サマンサは22年2月末で、バッグと関連会社のアパレルを合わせて262店となっている。

 19年2月末には292店あったから、コロナ禍で30店減となった。

 サマンサの店舗は、主に大都市中心部の百貨店やファッションビルにあり、コロナ禍での外出自粛が大きな足かせとなった。

 サマンサは1994年に1号店を渋谷パルコに出店。2000年代は若い女性に絶大な人気があった。ヒルトン姉妹をCMに起用していた。しかし、近年は飽きられ低迷していた。

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