自治体DX最前線

愛媛県のDXは「働き方を変えるヒント」に テレワークの注意点人手不足・人材流出(2/4 ページ)

» 2022年12月30日 08時00分 公開
[秋沢崇夫ITmedia]

地方全体が抱える「働き方」の課題

 特に地方で深刻視される人口減少・高齢化が招く危機の一つが、労働力不足である。若い働き手が減少すれば、地方の大多数を占める中小企業の人手不足を招き、それがじわじわと地域の企業活動の停滞につながることは否定できない。

 後継者不足による地域企業の消滅が続けば、魅力的な働き場所・多様な働き方を求め都市部へと流出する若者が増加し、さらなる少子高齢化を招くことが予想される。こうした悪循環が、また労働力不足を加速させることになる。

地方の自治体や企業が悪循環に陥らないために

 このような労働力不足という課題に対し、地方企業ができる策の一つが「IT(アウトソーシング)の活用」である。例えば、発注代行やリサーチ、書類作成などの業務を、インターネット上でのアウトソーシングに頼ることで大幅なリソース確保が実現する。

 例えば、愛媛県のとある工務店では、人手不足を補うため、オンラインアウトソーシングサービスを導入した。その結果、限られた人員がそれぞれコア業務に集中できる環境がつくり出せているとの声がでている。特に、補助金関連の専門知識を要する業務に対しても、社員に代わり業務を遂行できるので「オンラインアウトソーシング活用の価値を感じた」(担当者)という。

 同工務店が所在する愛媛県では、物理的な距離の壁を破壊できるデジタル技術は、地方にこそ大きな可能性があると考えている。2022年、中村時広知事によって「あたらしい愛媛の未来を切り拓く DX実行プラン」が打ち出され、「先駆的なDX関連企業との連携・協働」が掲げられた。

 同県では既に多くのDX関連企業と包括連携協定を締結していて、 先駆的な民間企業やスタートアップ企業との協働により、愛媛オリジナルの産業・暮らし・行政のDXや、デジタル人材育成を推進しているのだ。

 例えば主な連携企業として、コニカミノルタ、グーグル、楽天、LINEなどの大手企業などが挙げられる。ITを活用したアウトソーシングサービスもDX関連企業の1つであり、IT技術を活用できる企業内人材の育成という観点からも有用であろう。

 さらに、ITを活用したアウトソーシングの意義は、単なる「課題の穴埋め」にとどまらない。全国各地・世界各国の優秀な人材に業務依頼ができるという点にも私は注目している。特にパワーポイント作成やデザインなど専門性の高い業務に関しては、それを得意とする全国(世界中)の人材に依頼することで、時間が削減できるだけでなく、クオリティーの面でもよりよい成果が期待できるだろう。

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