実質「1000円以下」で宿泊可能に 全国旅行支援は観光業復活の「起爆剤」となるか「卒旅」シーズン。ホテルも動く

» 2023年01月12日 16時06分 公開
[岡安太志ITmedia]

 1月10日から政府の観光需要喚起策「全国旅行支援」が再開した。全国旅行支援とはコロナ禍で打撃を受けた旅行関連業界の復興を支援すべく、政府が実施するものだ。

 また各都道府県では地域に旅行客を呼び込むべく、全国旅行支援に「上乗せ」する独自キャンペーンを実施している。旅行客側からすると、この上乗せ分もうまく利用すれば宿泊代金を実質「1000円以下」に抑えることも理論上は可能だ。

 こうした国や自治体の支援を業績回復の「起爆剤」とすべく、各社は動きだしている。

全国旅行支援が再開(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 全国旅行支援の補助内容についておさらいしたい。宿泊旅行商品の割引率は旅行代金の「20%」で、補助上限額は5000円までだ。割引率は先月までの「40%」から引き下がった。

 上記に加えて、土産物店などでつかえる地域クーポンは休日なら1000円分、平日の場合は2000円分利用可能となる。割引き額と地域クーポンを合計すると、補助額の上限は一人一泊あたり7000円だ。

 この動きに際して各都道府県は地域に旅行客を呼び込むべく、全国旅行支援に「上乗せ」してクーポン券を発行するキャンペーンを実施している。大阪府では、「大阪来てな!キャンペーン」とのコラボイベントがそれに当たる。このキャンペーンでは1月25〜2月28日の期間内の宿泊者に対して、平日は3000円分、休日は2000円分の地域クーポンを上乗せする。

 つまり全国旅行支援と合わせると、旅行客は平日は5000円分、休日は3000円分の地域クーポンがもらえることになる。ちなみにこのキャンペーンの対象となるには、平日は7000円、休日なら4000円以上の宿泊・旅行商品の購入が必要だ。

『大阪来てな!キャンペーン』公式Webサイト

 これらをまとめると、例えば大阪府で「7000円」の宿泊プランを「1月25〜2月28日の期間」の「平日」に予約することで、7000円の20%割引=5600円となり、5600円(宿泊旅行代金)−5000円(地域クーポン)=実質600円で宿泊可能になるわけだ。もちろん諸条件を整えた理論上の計算ではあるが、補助額のインパクトは大きいといえよう。全国旅行支援の再開を皮切りに、こうした「攻略法」ともいえる情報も、SNSユーザーの間で飛び交っている。

 全国旅行支援の開始を受けて、民間企業も動き出した。全国で11施設のホテル、旅館を展開する株式会社 アゴーラ ホスピタリティーズは、京都の対象施設を公式サイトから予約すると、上乗せ割引として1室500円割引きの特典を付与する。折しも1月から卒業旅行のピークシーズンにも突入するため、独自キャンペーンによって卒業旅行の需要をうまく取り込むことができれば、宿泊施設にとってはさらなる追い風となるだろう。

 国内では新型コロナの新規感染者が20万人を超える「第8波」に面している。全国旅行支援と各都道府県の支援策は、いずれも平日の旅行に対する支援が手厚い。これは旅行需要の喚起はもちろん、旅行客の「分散化」を後押しする。旅行業界各社はこうした流れを理解した上で、旅行商品のプラン設計が求められそうだ。

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