1月26日に、トヨタ自動車の豊田章男社長が退任の発表を行い、次期社長に佐藤恒治氏を指名して以来、筆者のところには「新体制で一体トヨタはどう変わるのか?」とか、「詳細解説原稿を楽しみにしてます」とか、極めて期待に満ちた問い合わせが殺到している。
ちょっと一度冷静になってもらいたい。一夜城じゃあるまいし、次期社長が指名された途端、新体制のすべてが決まっているなんてことはあるはずがない。いまトヨタの内側では、新しいチームの組閣と方向性が順次組み立てられている途中で、それが明確に発表されるのは、常識的に考えて、佐藤社長が正式に就任する4月1日以降になる。それまでは、急ピッチで新体制作りと新しい方針がビルドアップされている途中であることをまずは理解していただきたい。
とはいえ、新体制は、これまでトヨタが行ってきた延長線上にあるという意味で、分かっていることもある。ファクトとファクトの間を筆者が推測して補完できる部分もある。それは予想にすぎないものだが、高まる期待にお応えする意味でそのあたりを少し書いておこうと思う。
まずは2月13日の会見での佐藤次期社長のスピーチから重要な部分を抜き出していこう。
新しい経営チームのテーマは「継承と進化」です。創業の理念を大切にしながら、「商品と地域を軸にした経営」を実践し、モビリティ・カンパニーへのフルモデルチェンジに取り組んでまいります。「もっといいクルマづくり」と「町いちばんのクルマ屋」。この13年間で豊田社長が浸透させてきたトヨタが大切にすべき価値観があるからこそ、新チームがやるべきことは、「実践」のスピードを上げていくことです。
さて、これは何を言っているのか? 素直に文章を読めば、経営方針を180度転換するような話ではなく、「創業の理念を大切に継承」しながら、「モビリティ・カンパニーへのフルモデルチェンジに取り組んでいく」という話であり、それはつまり豊田章男社長時代と限りなく相似形であると受け取るべきだろう。
というわけで一部で人口に膾炙(かいしゃ)している無責任なうさわ話、それはつまり「豊田章男氏はBEV化への対応の遅れをようやく認めて引責辞任し、佐藤新体制ではいまさらながらBEV化の遅れの取り戻しに全力で挑む」という読み解きは明らかに間違いであるということだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング