串カツ田中も塚田農場も各店舗の個性によって成長してきた。だから、そこで働いている店長もスタッフも個性を重視するので、どうしてもマニュアルを軽視しがちなのだ。
なぜかというと、マニュアルというのはサービスや調理技術などを平準化するものなので、個性など発揮されてしまったらかえって迷惑だからだ。「マニュアル徹底で全国どこの店でも同じ質のサービスを提供する」ということを目指しながら、「店舗ごとに個性を出す」というのは戦略として破綻してしまっているのだ。
このような大きな「矛盾」は必ず大きな問題を起こす。それも塚田牧場を見れば明らかだ。16年ごろに約150店舗まで増えた塚田農場では、出店スピードに従業員の教育が追いつかなくなるという問題が起きた。
『マニュアルがないため、店舗ごとの差が開き、「別の店舗ではこんなサービスがあったのに、こちらではやってないのか」と来店客から言われることも少なくなかった。なんとか事態を打開しようと各店がそれぞれマニュアルを作り始めると、今度は現場は混乱した』(日経ビジネス 22年11月22日)
この「混乱」が、全国300店舗まで出店した串カツ田中でも起きてしまった可能性はないか。
店舗の現場責任者は個性で実績を出してきた成功体験があるので、マニュアルよりも現場がやりやすい方法を優先する。マニュアルはあくまで理想的なやり方であって、現実の動きは現場判断に基づいて、フレキシブルに「マイルール」でまわしていこうじゃないか、となるのだ。
そこへマニュアル順守を叩き込まれた新人がポーンと飛び込んだらどういうことが起きるのか。なかなか互いを理解することは難しいのではないか。実際、先の新人によるものだという告発文書にも、店舗責任者とのカルチャーギャップへの戸惑いが綴られている。
『全てがマニュアル通りにいかないことは痛感しましたが、私自身正しいマニュアルを基本とした動作で、日々怒号や指摘されることに理解できず、非常識は承知の上で一日無断欠勤をし色んな方に告発したような相談をさせていただきました』
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