西松屋の郊外店を訪れた人の誰もが感じることは、いつも空いているということだ。顧客の気配がなく、ガラガラだ。しかし、本当に誰も店に来なければ、売り上げはゼロ。年間1600億円以上も売る企業になっていない。
店に入ってみると使い勝手が良い。店が広くて、アイテム数が豊富。男児・女児の服、靴、帽子、ベビーカー、玩具、ベビーフード、おむつ、マタニティ用品など、買いたいものが何でもそろっている。
通路も広くて歩行をふさぐワゴンやマネキンを置いていない。ベビーカーを押していても歩きやすく、5〜20分程度と短い滞在時間で買物をして帰る人が多い。そのため、ある瞬間だけ切り取れば店内がガラガラに見えるのだ。
これだけ空いていれば、明らかに非接触性が高く、通気性も良い。コロナ禍でも売り上げが増加したのもうなずける。
店舗は極力、どの店も同じ商品が同じ場所にあるように、レイアウトが標準化されている。従って、一度西松屋で買物をした人ならば、別の店に行っても、迷うことなく目的の品を買えるようになっている。
特に、おむつ、ベビーフードなどのベビー用品は、購入頻度が高く、週に何度も来る常連が多い。車で入りやすいように、十分なスペースの駐車場を備えている。
顧客が買いやすい低価格を実現させるために、店舗はパート・アルバイト2〜3人で回せるように効率化を徹底して、人件費を抑制している。1人の店長が近隣の複数店舗を巡回しながら管理している。
背が届かない高所にまで商品がハンガーに掛かっており、顧客はセルフで、物干し竿のような「商品取り棒」を使って取る。 商品取り棒は、売場に何本か設置されている。
商品の発注は、本部で一括して行う。服は工場でハンガーに掛けられた状態で届くので、店員は陳列するだけだ。また、細かくサイズ展開している一方で、裾上げなどのお直しサービスは行っていない。
商品は、主に中国、バングラデシュ、ベトナムなどアジア諸国から調達しており、特に衣料品については国内生産の商品はほとんどない。紙製品の雑貨やベビーフードなどには、国産の商品もある。
このように、西松屋には独特で高品質な商品を手頃な価格で売るシステムがある。店内はパッと見ただけでは、棚が並んでいるだけで殺風景に映るが、随所に工夫が見られる。
また、西松屋は衣料品の「エルフィンドール」、雑貨の「スマートエンジェル」といった自社開発のプライベートブランド(PB)を有している。家電メーカーなど他業種であっても製品の企画や開発に携わっていた人材をスカウトして、より良いPB商品の開発を行っている。
PBの販売シェアは3割弱を占めており、競合他社との差別化につながっている。また、中間流通がない分だけ利益率の向上に貢献している。
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