「80万人も生まれている」 深刻な少子化なのに「西松屋」が強気なワケ長浜淳之介のトレンドアンテナ(3/4 ページ)

» 2023年03月31日 10時17分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

兵庫県姫路市で誕生

 西松屋発祥の地は兵庫県姫路市。1956年、現名誉会長の茂里佳弘氏とその母・茂理満氏が、宮参り衣装や出産準備品を扱う「赤ちゃんの西松屋株式会社」を設立したのが始まり。大手前通り店を出店(97年11月廃止)した。大手前通りはJR姫路駅から、日本の世界遺産第1号姫路城に至る姫路市のメインストリート。

 当時の日本の出生数は167万人ほどあって、今の倍くらいあった。しかし、200万人を超える出生数を誇った1940年代後半の第1次ベビーブームと、70年代前半の第2次ベビーブームのはざまにあって、ベビー服・用品にとって絶好の環境とまではいえなかった。

 西松屋が人口動態の谷のような時期に創業したのは重要だ。常に出生数が減っていく状況を意識して経営できたからだ。これが、同社が少子化でも強い頑強な体質になった1つの要因ではないだろうか。

 59年には「株式会社西松屋ストアー」に商号変更。65年には、子供服の販売を事業目的に追加し、姫路市の繁華街、紺屋町に出店。本部事務所も移転した。ここで初めて、子供服にまで事業領域が広がって、より広い顧客層を対象にするようになった。

 71年には西日本の中心、大阪市に出店した。79年「株式会社西松屋チエーン」に商号を変更。同年、姫路市の郊外に駐車場付き郊外型店舗を出店した。

 そして、88年には神戸市に郊外型大型店舗を出店。89年には、商品情報と販売情報を即時に収集するため、POSシステムと汎用コンピュータを導入している。

広々とした駐車場を備える

 90年には初の郡部出店となる、兵庫県神崎郡福崎町に出店している。この頃には、人口希薄で地価が安い郊外に大型店を出し、効率的な店舗運営を徹底追求する、今日の西松屋のビジネスモデルが固まってきた。そして、90年代から2000年代の全国チェーンへの発展期を迎える。

 1994年には、分散化していた本部機能の効率化を図るため、播但連絡道路(播但道)花田IC近くの姫路市郊外、飾東町に本社を移転した。97年、「株式会社西松屋チェーン」に商号を変更。

 90年代より近畿以外の地域に出店を開始。93年に中国、97年に四国、97年に関東、98年に九州、99年に中部、2001年に東北、03年に北海道にそれぞれ進出。04年に沖縄県に出店して、47都道府県に店舗網を張り巡らせた。

 97年に店頭登録、99年に東証・大証2部、2001年には東証・大証1部に上場している。現在は、東証プライム上場銘柄となっている。

 2018年には、店舗数1000店に到達した。21年には自社運営のインターネット販売サイト「西松屋公式オンラインストア」を開設した。今後は店舗販売に加えてオンライン販売にも力を入れていくという。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.