「物価の優等生」と言われた卵の価格高騰が止まらない。2022年から流行する鳥インフルエンザの影響で、鶏の殺処分数は3月時点で1500万羽を超えている。これは全国で飼育している採卵鶏の約1割に相当し、深刻な供給不足につながっている。
外食業界各社は、仕入れ不足から一部メニューの販売を休止せざるを得ない状況が続いている。
中華・ラーメンチェーン各社の状況はどうか。餃子の王将では公式サイトで2月28日、「一部商品の販売を休止する」とアナウンスしている。現状について取材したところ状況は変わっていないという。販売休止の対象となった商品については各店舗の状況によって異なるとした。
日高屋では「天津飯」と、トッピングの「温泉卵」が販売休止中だ。温泉卵が乗っている「汁なしラーメン」も影響を受け、一部店舗で販売休止になっている。SNSでは日高屋に来店して汁なしラーメンが無いことに気づき、ショックを受ける声が複数上がっている。
天下一品では、卵を使用したメニューの仕入れに影響は出ているものの、「現状はまだ企業努力で対応している」という。卵を使用したメニューの価格の影響についても、2月に価格改定を実施したばかりのため当面はないという。今後の対応策や代替策については、「現状特に答えられることはない」とした。
外食業界が卵不足に悩む背景には、鳥インフルエンザの被害だけではなく、農林水産省が1月に養鶏団体に向けて出した要請も関係している。
農水省は鶏卵の安定供給のため、鶏に卵を産ませる期間(採卵期間)を延ばすことなどの対応を求めると同時に、家庭向けの供給を優先するよう求めていた。卵の流通経路は小売業者、外食業者、加工業者に分かれており、消費者の不安につながらないよう小売業者への供給の優先を求めたのだ。
それでも卵の小売価格は高騰を続ける。鶏卵卸大手のJA全農たまごが公表している相場情報によると、1キログラムあたりの卵の相場は22年3月は190円程度だったところ、3月30日時点の相場(Mサイズの基準値)は350円となっている。
こうした卵不足の状況は長期化するとの見通しがもっぱらだ。野村哲郎農相は3日の会見で、鶏卵の供給不足が戻るまで「大体半年から1年ぐらいかかる」と述べている。外食業界は長期化する卵不足の中で、コロナ禍を乗り越えてなお、難局を迎えているようだ。
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