そんな志賀氏と親しく付き合っていたということは、渡辺氏が「裏仕事」を担っていた可能性も否めないのだが、筆者が注目したのはそこではなく、正力松太郎氏との関係だ。
渡辺氏は京成電鉄の総務部嘱託の仕事をしながら、京成電鉄本社ビルの1階で「テレビ喫茶」を経営していたことがある。当時はテレビ放送が始まったばかりでテレビが珍しかったのだ。そして、そのテレビはなんと、日本テレビを立ち上げたばかりの正力松太郎氏から「もらった」というのである。現在の価格でいえば、50万円を超えるような「高級品」を無償で提供されたということは、両者がかなり親密な関係だった可能性がある。
それがうかがえるのが「京成電鉄総務部」というキーワードだ。実は正力氏は戦前、外部招へいで京成電鉄の総務部長をしていたことがあるのだ。渡辺氏が京成電鉄総務部の嘱託になったことで、正力氏との関係ができたのか分からないが、両者に強い結びつきがあったことは間違いない。
そして、これこそが筆者が渡辺氏を「ディズニーランド誘致の影のキーマン」と考えている理由だ。ご存じの方もいらっしゃるだろうが、実は正力松太郎氏とウォルト・ディズニーには浅からぬ関係がある。
1950年代、米国政府は原爆のネガティブな情報を打ち消そうと、原子力の安全性と平和利用を盛んにPRした。その協力者として白羽の矢を立てたのがディズニーで、科学番組『ぼくらの友達 原子力』という科学番組を制作させて、これを世界中に広めようと考えていた。
そこで日本で協力をしたのが、正力氏だ。ウォルト・ディズニーの兄で当時、実質的な経営責任者だったロイが正力氏に、『ぼくらの友達 原子力』を日本テレビで放映できないかと相談して最終的に、58年1月に実現している。このあたりは政治評論家・有馬哲夫氏の『原発・正力・CIA』(新潮社)に詳しいので興味のある方はお読みいただきたい。
そして、正力氏は京成電鉄とも関係が深い。先ほども述べたように総務部長を務めていたわけだが、実はこのときに京成電鉄が上野・浅草に乗り入れられるように政治家に働きかけて贈賄で有罪判決を受けているのだ。また、戦前に正力が設立した「大日本東京野球倶楽部」(後の東京巨人軍)の筆頭株主も京成電鉄だった。
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