一人旅の研修で青春18きっぷを使うというアイデアはどこから出てきたのか。
船井氏によると、もともと採用面接のときに学生から「内定後、入社までに何をすればいいですか?」と聞かれることが多く、同社の社長は「旅でもしたらいい」と回答していたという。
コロナ禍で旅をする機会が少なかったという新入社員の事情は把握していた。若いうちに人生経験をさせるため「可愛い子には旅をさせよ」「獅子の子落とし」というコンセプトの研修をしたらどうかという案が出ていたという。
そういった中、船井氏が22年8月に山陰パナソニックに入社。大阪から島根県出雲市に思い切って移住した。会社内で「青春18きっぷで半月間一人旅をしていた経験がある」と話をしたところ、新入社員研修の企画を任されることになった。
これまでにないスタイルの研修なので、実施するためには経費精算処理や安否確認の方法など、超えければいけない壁はたくさんあった。しかし、他部署と調整を繰り返しながら実現にこぎつけたという。
研修を実施して、新入社員からは「一人旅は大変だった。家族や周囲の人のありがたさが分かった」「人に話しかけて、自分の思いを伝えることの大切さを学んだ」といった声が寄せられた。また、「積極的に動くようになった」と評価する先輩社員もいた。
ただ、船井氏によると最も大きな効果は、同期の絆が深まったことだという。新入社員はそれぞれ違う職場に配属され、周囲は自分より年上という環境で働いている。そうした中で、同期同士で連絡を取り合ったり、集まったりする機会が増えたという。こうした横のつながりが強まることで、離職率低下も見込める。
23年度は「サンパナジャーニー」と名称を変更し、引き続き同じスタイルの新入社員研修を実施する同社。どのような効果が生まれるだろうか。
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