「楽天モバイル」はなぜ苦戦しているのか 背景に4つの誤算誤算の連鎖(4/5 ページ)

» 2023年04月23日 06時57分 公開

楽天モバイルが求める「プラチナバンド」とは

 3つ目の誤算は、「プラチナバンド」問題です。プラチナバンドとは、国内の電波利用において最も携帯電話がつながりやすい、700〜900MHzの周波数帯を指します。国内のプラチナバンドは3大キャリアに独占され、現在空きはありません。

 後発の楽天に割り当てられた周波数は1.7GHzであり、屋外では大きな問題はないものの、先行3社に比べ室内での接続の悪さは利用者の知るところです。これを改善しない限り、基地局整備がすすんでも「つながりにくい」楽天は解消されず、利用者獲得の足は引っ張られ続けることになるのです。

photo プラチナバンド(出典:楽天モバイルが総務省の会合に提出した資料

 そこで楽天は21年2月に「3社独占のプラチナバンドを公平に分けろ」と意見書を提出する形で総務省に嚙みつきました。さまざまな議論の末、総務省は22年11月にようやく3大キャリアの工事費負担で一部の電波領域を楽天に分け与える方針を打ち出しました。

photo 総務省の方針の要約(出典:楽天の22年11月期決算資料

 ただ、この方針では実現までに5年がかかること、3大キャリアに大きな工事費負担が生じることなど、双方にデメリットがあり、ドコモが新たな案を提出。700MHz帯の3キャリア携帯電話帯と隣接の地上波テレビ帯などの間に存在する空き部分に、3MHz幅×2の携帯電話4Gシステムを導入する案です。改善を急ぎたい楽天は、いったん、これを受け入れる姿勢で動き出し、総務省もプラチナバンド再割り当てに向けた方向性を固めました。

photo ドコモの提案(出典:ドコモが総務省の会合で提出した資料)

 一方、この案では、3MHz×2部分利用に向けた工事費用は楽天が負担することとなり、かつ3MHz×2は楽天が希望していた15MHz×2の5分の1の容量に過ぎません。今後、契約者数が増えた折には収容しきれなくなることが確実であり、プラチナバンド問題はこの先も楽天を悩まし続ける問題であることには変わりがないのです。

松本総務相、今秋の新規割り当て目指す方針

 プラチナバンドでは最近になって、大きな動きがありました。総務省が未使用帯についての利用意向調査の結果を公表。楽天が、早期割り当てを要望しました。

photo 楽天モバイルは「早期割り当て」を要望

 松本剛明総務相は結果を受け、記者会見で「秋頃を目指し、手続きを進める」と明言。現時点で新規の割り当て先は決まっていないものの、「携帯市場の民主化」を掲げる楽天モバイルに割り当てが決まれば、エリア拡大に大きく前進することは間違いありません。それと同時に、そもそも楽天はこのプラチナバンド問題について事業参入前にはほとんど意識していなかったという見方もできるでしょう。この誤算は事前調査の甘さに起因するものであるといえそうです。

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