こうなるとそのビジネスは急速に衰退していく。『「乃が美」と「いきなり!ステーキ」の共通点は何か 両社がハマった沼』の中でも述べたように、カニバリが進むということに加えて、何よりもブランド価値が急激に低下して、消費者がそっぽを向いてしまうのだ。
と聞くと、「ブームで似たような店ができるのは悪いことだ」と言っているように誤解されるかもしれないが、そうではない。筆者はこのような一般消費者に向けて飲食や商品を提供するビジネスでは「模倣」をするのは当たり前だし、日本の場合はこの高度な「模倣文化」がさまざまな産業を発展させたと思っている。
中国や韓国のことを「パクり」「民度が低い」などとディスって優越感に浸っている人たちには大変申し上げにくいが、実は半世紀前に「パクリ」といえば、日本人の専売特許だった。
自動車も家電も海外メーカーのものを忠実に模倣した。あらゆる産業・業界で欧米のビジネスモデルを参考にするだけではなく、ブランドをそのまま「パクる」ということまで横行していたからだ。年配の方ならばご記憶にあると思うが、松下電器も “マネシタ電器”なんて馬鹿にされており、松下幸之助氏も、こんな負け惜しみを言うしかなかった。
「日本人は決して単なる模倣民族ではないと思う。吸収消化する民族である」(PHP 1965年7月号)
筆者はこのような日本の過去は、ちっとも恥ずべきことではないと思っている。民度がどうとかいう話ではなく、自分たちより優れた他者から技術や方法論を真似て、自分たち流にアレンジをして、ときに本家を追い抜かすまで発展させる、というのは人類がもっている素晴らしい特徴のひとつだ。
例えば、かつて半導体といえば、欧米や日本の独壇場だったが、他国から技術者を引き抜いて、国家をあげて真摯(しんし)にパクってきた台湾や韓国が本家を追い抜かすほど成長している。電気自動車や太陽光発電でも米国や欧州がリーダーかと思っていたら「パクリ大国」の中国がメキメキと頭角をあらわしている。
世界の中で、自分たちだけの完全オリジナルの技術で発展した国などない。「パクリ、パクられ」で世界は回っているのだ。
そういう現実を踏まえると、高級食パンでもタピオカでも唐揚げ専門店でも、似たような店が増えるのは当然だし、「パクり、パクられ」があったからこそ産業が発展して、行列ができるブームも発生するという現実もある。
人気居酒屋「鳥貴族」が、似た名前の居酒屋「鳥二郎」を提訴した際、「鳥二郎」は次のような反論をしている。
『答弁書では「飲食業界は模倣を前提に成り立っている。競合店が互いに模倣し合って外食産業は発展してきた」とし、業界で“パクリ”は常識だと主張。鳥貴族の社長が以前に経済誌のインタビューで、行きつけの飲食店が均一価格だったことをヒントに価格を「280円均一」にしたと明かしていたとし、「社長も模倣が起業のきっかけになったと認めている」と指摘した』(産経WEST 2015年6月16日)
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