このように「模倣」は決して悪いことではない。むしろ、競合同士が切磋琢磨して、商品やサービスの品質向上や価格競争をさせていく効果も期待できるので、消費者的には悪いことではない。
では、何が悪いのかというと、「今の人口減少時代にはそぐわない」という点に尽きる。似たような店が乱立すれば、競合同士が切磋琢磨して、商品やサービスの品質向上や価格競争が激しくなる。しかし、どれだけ安くていいものを提供しようとも、消費者は減っているのでもうからない。「薄利多売」は人口増時代だから成立したビジネスモデルなのだ。
今の中国や高度経済成長期の日本を見れば分かりやすいが、人口が増えている社会では「パクリ」のビジネスはおいしい。ブームが過熱すると、オリジナルを買えない人々が世の中にあふれかえるので、「コピー」でもそれなりに売れるからだ。
しかし、人口減少社会ではそうならない。ブームが起きて行列ができても、消費者が少ないので「オリジナル」を購入できる。「コピー」が大量にあふれると、オリジナルのビジネスを邪魔して、ブランド価値を下げることにしかならず産業全体を衰退させる。
芥川龍之介の『蜘蛛の糸』ではないが、細い糸にあまりに多くのプレイヤーがぶら下るることで、全員が地獄に落ちてしまうのだ。
つまり、「模倣」を前提にみんなで切磋琢磨しながら市場を盛り上げるという考え方は、人口が増えていた時代だから通用した話に過ぎず、これからの時代は「寿命」を急速に縮める悪手なのだ。
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