売上大幅減なのに6年ぶり最終黒字 ミニストップ浮上のカギは「トップバリュ」と「ベトナム」妄想する決算「決算書で分かる日本経済」(2/4 ページ)

» 2023年04月28日 12時00分 公開
[妄想する決算ITmedia]

不採算の海外事業から続々撤退

 ミニストップが黒字転換した大きな要因は、韓国事業の売却です。韓国ロッテに310億円で売却し、売却益として288億円を計上しています。

出所:同社決算短信(23年2月期)

 同社の韓国事業は国内事業より規模が大きく、21年度の国内事業売上が734億円に対し、韓国事業は1036億円でした。一方で、韓国事業は赤字が継続しており、21年度は11.3億円でした。この他、同様に赤字が継続していた中国市場の撤退などもあり、売り上げを減らしながら、営業赤字幅を圧縮できたようです。

出所:同社決算説明会資料(23年2月期)

 同社はフィリピン事業も一足早く撤退しており、海外事業の選択と集中を進めています。現在、海外事業で残っているのはベトナムです。ちなみに、ベトナム事業も赤字となっており、同社は国外展開している全ての市場で赤字という非常に苦しい状況でした。

国内は客数が減少、一方で平均単価は向上

 続いて、主力の国内事業について詳しく見ていきましょう。売上高は前期比1.0%増の742億円、営業利益は8.3億円の赤字です。赤字幅が縮小しているものの、苦しい状況が継続しているようです。

出所:同社決算短信(23年2月期)

 利益面に関しては、粗利率が前期比0.2%減の29.6%となっており、原料高の影響を受けています。こうした中でも赤字幅が縮小したのは、不採算店舗撤退による規模縮小の影響が大きいといえます。

出所:同前

 既存店の1日当たりの売上高を見ていくと、前期比99.6%と減少しています。売上高を「客数」と「客単価」に分けると、既存店平均客数は97.8%、平均単価は101.8%と客数の減少が影響しているようです。

 業界最大手のセブン‐イレブンでは、既存店の売り上げが前期比111.9%、そのうち客数は同108.3%、客単価が同111.9%でした。これと比べると、ミニストップが集客に苦戦した状況が鮮明です。

 ちなみに、店内調理の多いミニストップは「店内加工食品」とそれ以外の「コンビニ商品」に分けて売り上げを開示しています。既存店におけるそれぞれの売り上げは、店舗内加工食品が前期比106.3%、コンビニ商品が同98.6%といった状況で、特に苦戦していたのはコンビニ商品です。

PBの商品力にも課題?

 現在のコンビニ業界では、PB(プライベートブランド)商品が非常に重要性を増しています。各社は豊富な販売データを持っていますし、規模を拡大する中で、商品開発力を強化しています。データを活用し価格力も優勢を持ちやすいPBは、各コンビニの集客に影響を与える部分が大きい商品です。

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