「バーニーズ」はなぜ苦戦し、売却されたのか かつてはバブルに沸いた日本を象徴する存在長浜淳之介のトレンドアンテナ(1/4 ページ)

» 2023年05月02日 10時40分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

 セブン&アイ・ホールディングスは、傘下にある高級セレクトショップ「バーニーズ ニューヨーク」を経営するバーニーズジャパン(東京都千代田区)を、5月1日付でラオックスホールディングスに売却した。売却額は不明。

 セブン&アイは、物言う株主である米国投資会社のバリューアクト・キャピタルより、企業価値を高めるために、収益の上がらない他の事業は切り離して、好調なコンビニだけに専念するように求められてきた。

セブン&アイが手放した

 そうした、物言う株主が主張する「選択と集中」の一環。そごう・西武売却、イトーヨーカ堂の祖業であるアパレルからの撤退、イトーヨーカ堂とヨークの合併などが進められている。こうした一連の構造改革の中でバーニーズジャパンのM&Aが決まった。

 これは、バーニーズジャパンにとって三度目の身売りとなる。魅力のある業態でありながら、なかなか売り上げが上がらない実態がある。

 一度目の親会社の交代は2006年。伊勢丹(現・三越伊勢丹ホールディングス)から住友商事と東京海上キャピタルに売却された。

バーニーズニューヨークを日本に持ってきたのは、伊勢丹だった

 二度目の親会社交代は15年。セブン&アイが住友商事から1万2801株を取得して完全子会社化した。セブン&アイは2013年に、東京海上キャピタルより1万2800株を取得していたので、2段階に分けての買収だった。買収金額はいずれも約60億円で、合わせて120億円といわれている。

 実は、米国の本家、バーニーズ ニューヨークも日本以上に苦戦しており、1996年に連邦倒産法の適用を受けて倒産。このときは再建されたが、2019年に二度目の倒産となった。なお、日本法人は経営分離しているので、米国バーニーズ ニューヨーク倒産の影響は受けていない。

 米国バーニーズ ニューヨークは、米国のブランド管理会社であるオーセンティック・ブランズ・グループに買収され、全店閉店している。

バーニーズ・ニューヨーク創業100周年記念のエクスクルーシヴアイテム、イタリア・ベルヴェストのジャケット(36万8500円)(出所:プレスリリース)
バーニーズ・ニューヨーク創業100周年記念のエクスクルーシヴアイテム、アリゾナラブのサンダル(3万800円)(出所:プレスリリース)

 オーセンティック社は、日本でもおなじみのファストファッションのフォーエバー21や、紳士服のブルックス・ブラザーズも傘下に収めており、50以上のブランドを有している。

 米国の会社とライセンス契約して、日本で事業展開した後に米国の本家の店舗が消滅しても、日本のブランドとして存続しているチェーンは他にもある。

 ダスキンが展開する、ドーナツチェーン国内最大手「ミスタードーナツ」は、米国ではイリノイ州に個人経営の店が1店存在するだけで、チェーン店としては1990年にダンキンドーナツに統合されて消滅している。

 また、食のセレクトショップ「ディーン・アンド・デルーカ」は、日本では家具店の「ジョージズ」「シボネ」などを経営する、ウェルカム(東京都目黒区)によって展開されている。しかし、米国ニューヨーク発祥の本家は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、2020年に経営破綻し、全店閉店している。

 バーニーズ ニューヨークの歴史をたどり、苦難の近況、ラオックスによる再建のシナリオを見ていきたい。

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