セブン&アイ・ホールディングスは、傘下にある高級セレクトショップ「バーニーズ ニューヨーク」を経営するバーニーズジャパン(東京都千代田区)を、5月1日付でラオックスホールディングスに売却した。売却額は不明。
セブン&アイは、物言う株主である米国投資会社のバリューアクト・キャピタルより、企業価値を高めるために、収益の上がらない他の事業は切り離して、好調なコンビニだけに専念するように求められてきた。
そうした、物言う株主が主張する「選択と集中」の一環。そごう・西武売却、イトーヨーカ堂の祖業であるアパレルからの撤退、イトーヨーカ堂とヨークの合併などが進められている。こうした一連の構造改革の中でバーニーズジャパンのM&Aが決まった。
これは、バーニーズジャパンにとって三度目の身売りとなる。魅力のある業態でありながら、なかなか売り上げが上がらない実態がある。
一度目の親会社の交代は2006年。伊勢丹(現・三越伊勢丹ホールディングス)から住友商事と東京海上キャピタルに売却された。
二度目の親会社交代は15年。セブン&アイが住友商事から1万2801株を取得して完全子会社化した。セブン&アイは2013年に、東京海上キャピタルより1万2800株を取得していたので、2段階に分けての買収だった。買収金額はいずれも約60億円で、合わせて120億円といわれている。
実は、米国の本家、バーニーズ ニューヨークも日本以上に苦戦しており、1996年に連邦倒産法の適用を受けて倒産。このときは再建されたが、2019年に二度目の倒産となった。なお、日本法人は経営分離しているので、米国バーニーズ ニューヨーク倒産の影響は受けていない。
米国バーニーズ ニューヨークは、米国のブランド管理会社であるオーセンティック・ブランズ・グループに買収され、全店閉店している。
オーセンティック社は、日本でもおなじみのファストファッションのフォーエバー21や、紳士服のブルックス・ブラザーズも傘下に収めており、50以上のブランドを有している。
米国の会社とライセンス契約して、日本で事業展開した後に米国の本家の店舗が消滅しても、日本のブランドとして存続しているチェーンは他にもある。
ダスキンが展開する、ドーナツチェーン国内最大手「ミスタードーナツ」は、米国ではイリノイ州に個人経営の店が1店存在するだけで、チェーン店としては1990年にダンキンドーナツに統合されて消滅している。
また、食のセレクトショップ「ディーン・アンド・デルーカ」は、日本では家具店の「ジョージズ」「シボネ」などを経営する、ウェルカム(東京都目黒区)によって展開されている。しかし、米国ニューヨーク発祥の本家は、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、2020年に経営破綻し、全店閉店している。
バーニーズ ニューヨークの歴史をたどり、苦難の近況、ラオックスによる再建のシナリオを見ていきたい。
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