取り壊された「中銀カプセルタワー」の行方は? 第1号が“動き”始めた週末に「へえ」な話(2/3 ページ)

» 2023年05月07日 08時00分 公開
[土肥義則ITmedia]

カプセルを動かしたいよね

 取り壊すからといって、そのまま捨てるのはもったいない。14年に結成された中銀カプセルタワービル保存・再生プロジェクトが「なんとかならないものか」と考え、取り外したカプセルのうち23基を再活用することが決まったのだ。

 カプセルの行き先として、国内外の美術館や商業施設に展示するほか、宿泊施設として使えないかといった計画が進んでいるとのこと。そんな中で、第1号が“動き”始めたのだ。

 “動き”始めたのはプロジェクトが進んでいるという意味ではなく、実際に“動くカプセル”としてよみがえったのだ。カプセルの1つを受け取って、再生に携わったのは大阪に本社を置く淀川製鋼所である。

トレーラーカプセルとして再生された中銀カプセル(撮影:山田新治郎)

 カプセルを受け取ったものの、どのように使うのか決まっていなかったそうで。「ああでもない、こうでもない」といった議論を重ねていくうちに、「カプセルを動かしたいよね」という話に。個性的な設計や歴史を知ってもらうために、移動できる「トレーラーカプセル」はどうかと考え、企画が進んでいったのだ。

 とはいえ、話はトントン拍子に進まない。トレーラーカプセルを実現するにあたって、積載重量の基準をクリアしなければいけなかったのだ。基準の上限は2.7トン。内装を取り外したいわば“箱だけ”の重さを測ったところ、2.5トンもある。となると、余裕は200キロしかない。アレも詰め込んでコレも備え付けてといった具合に、当時の姿に復元すれば、重量オーバー間違いなしの数字である。

解体時クレーンで下ろされるカプセル(撮影:山田新治郎)
カプセルの軽量化工事の様子(撮影:山田新治郎)

 こうした状況に対し、淀川製鋼所と関係者はどのような手を打ったのか――軽量化である。壁や天井の仕上げをせずに柱などが見えるようにしたり、ユニットバスの壁をなくしたり、二重窓を一重にしたり。できるところはすべて軽量化して、なんとか2トンまで抑えることに。700キロの余裕が生まれたので、アレも詰め込んでコレも備え付けてといった感じで、再生を進めることができたのだ。

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