行列、予約必須…… 「ガチ中華」が続々オープン ここまで注目される理由は?長浜淳之介のトレンドアンテナ(6/6 ページ)

» 2023年05月16日 05時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]
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池袋のフードコート

 池袋中華街の新しい変化として、小さな店舗が集まって安価に食事ができるフードコートが増えていることが挙げられる。

 最初にオープンしたのは、19年11月にオープンした「友誼食府」だ。池袋駅北口を出て直ぐのビルの4階にある。

ガチ中華のフードコートが2つ入る池袋のビル。4階に友誼食府、2階に食府書院

 店舗は6店あって、四川料理、上海料理、台湾料理、飲茶、豆乳と朝食などの専門店が入居していて、屋台のようでもある。同じフロアには、中国食材店の「友誼商店」が併設されており、東京在住の中国人にとって貴重な郷里の食材調達の場となっている。

 友誼食府には、店員も顧客もほぼ中国人しかいない。しかし、ほぼ全員の店員が日本語を理解しているので、日本人が行っても歓待してくれる。

 日本人のイメージする中国を具象化した横浜、神戸、長崎の中華街とはまた違った、異国情緒が体験できる店となっている。

 池袋には、中国の郷土色豊かなガチ中華の店がたくさんある。しかし、さまざまなガチ中華をチョイスして食べられる場所はなかった。その意味で友誼食府の登場は画期的だ。

 友誼食府は好評につきチェーン化に向かっており、21年3月には東京都立川市に2号店をオープン。こちらも友誼商店に併設された店となっていて、四川、上海、台湾、西安などの料理店が並んでいる。4人掛けのテーブルが4卓ほどで、こじんまりとしている。

友誼食府立川店
友誼食府立川店のフードコート店舗案内

 同店は、多摩都市モノレールの立川南駅のすぐ近くにある。立川の駅前にガチ中華の店は皆無ではないものの全く目立たない。いつの間にか、立川あたりでも中国人が増えていたようで、中国人のニーズに応えている。

 立川店では、元祖ガチ中華ともいえる、池袋の中国東北地方の専門店「永祥」が、上海料理店として出店している。小籠包が名物で、野菜と春雨のスープと共に店員が勧めてくる。野菜と春雨のスープは、タンメンのようなスープに、具材として薄い豆腐や巾着で豚のミンチを包んだものなども入っていて、あっさりとしている。

友誼食府立川店の店内
友誼食府立川店、池袋の永祥が出店
友誼食府立川店、永祥生煎館のスープと焼小籠包

 フードコート内では、意外にも脂ギトギトの中華料理はほとんど提供されていない。中国でもヘルシー志向が進んでいることが、友誼食府を訪れてみると分かる。

 友誼食府は友誼商店とのコンビで、福岡市、千葉県松戸市にも出店しており、全国に普及していく勢いを感じる。

 池袋ではその後、20年7月に友誼食府と同じビルの2階に、第2のフードコート「食府書苑」がオープン。さらに、21年9月には、池袋北口から徒歩4〜5分の場所に「沸騰小吃城」という第3のフードコートもオープンした。沸騰小吃城はごく近くに「ドン・キホーテ」の店舗などもあり、日本人の顧客が多い。

池袋の3つ目のフードコート、沸騰小吃城

 以上、ガチ中華は全国に70万〜80万人いるといわれる在日中国人を中心に、インバウンドで旅行に来る中国人、さらには日本人のファンを取り込んで成長している。

 ガチ中華は激辛が好きな人を引き付けているだけでなく、中華料理は脂っこくてしつこいというイメージを覆すものが多い。そこが支持されて、むしろ日本人の顧客ばかりの店が増えているほどだ。今回は東京の動きを見てきたが、都市部を中心に全国に波及していくのではないだろうか。

著者プロフィール

長浜淳之介(ながはま・じゅんのすけ)

兵庫県出身。同志社大学法学部卒業。業界紙記者、ビジネス雑誌編集者を経て、角川春樹事務所編集者より1997年にフリーとなる。ビジネス、IT、飲食、流通、歴史、街歩き、サブカルなど多彩な方面で、執筆、編集を行っている。著書に『なぜ駅弁がスーパーで売れるのか?』(交通新聞社新書)など。


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