日本で独自に発展した「町中華」には、中国では販売していない数々のメニューがある。「天津飯」は天津市で売っていないし、四川料理の「回鍋肉」「麻婆豆腐」は全くの別物だ。「ラーメン」「焼餃子」に至っては、むしろ日本料理、和食の一種と見なされている。
それに対して、本物の中国で食べられている中華を「ガチ中華」と呼び、日本流の町中華とは区別されるようになってきた。
ガチ中華の聖地と目されるのは、首都圏では池袋と西川口だ。いずれも、1978年に始まる中国の改革開放政策以降に移住してきた新華僑によって形成された、新しい中華街である。池袋にはガチ中華が集まる、バラエティ豊かなフードコートもあるほどだ。
これらはもちろん、日本に移住してきた中国人向けの店で、日本語が通じない店もある。しかし、仕事で中国に滞在して帰ってきた人、頻繁に中国に行く人など、現地の中国料理に触れた日本人が、本物の現地の味を求めてガチ中華に足を運び出した。
在中日本人数は、外務省の「海外在留邦人数調査統計」によれば、2022年10月1日時点で10万7715人に達している。しかし、12年のピーク時の15万399人からは5万人も減っている。
その5万人の大半は帰国したと推測されるが、その中から現地の中華のファンとなった人が懐かしがって、日本のガチ中華の店に通っているケースも多いと聞く。
また、都内の神田、新橋、銀座、新宿、上野のようなビジネス街に近い繁華街にも、ガチ中華の店が点在している。コロナ前には中国からの観光客、留学生にも愛用されていた。
ところが、コロナ禍で顧客が激減。神田を拠点とする「味坊集団」のように、住宅街の代々木上原、学芸大学といった場所に出店するケースも増えてきた。中国にまで旅行しなくても、日本で現地の味が体験できるということで繁盛店となった。
ガチ中華は、22年のユーキャン新語・流行語大賞にもノミネートされたほどだ。
ガチ中華とは、いったいどのようなものなのか。
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