では、業績はどうでしょうか。サイゼリヤはコロナ前の18年対比94%、ガストは82%まで回復しています。デニーズ(セブン&アイ・フードシステムズの売り上げを掲載)は2月決算のため、22年の業績がまだ出ておりませんが、21年までは売り上げ、営業利益含め苦戦していたことが見てとれます。サイゼリヤは営業利益率0.3%にて4.2億円の営業利益を創出するまで回復してきています。
原価やエネルギーの高騰により値上げが常態化してきた日本市場ではありますが、賃金上昇とのバランスが取れるまでは外食市場における低価格ニーズは今後も継続することが予想されます。
サイゼリヤは5月12日に「当面は値上げをしない」方向を打ち出しました。原材料の高騰が利益を圧迫していることは他社と同じですが、それを価格転嫁せず業務の効率化やメニュー改編、客単価アップで乗り切っていく方向です。実際にサイゼリヤの客単価は上昇傾向にあります。このサイゼリヤの経営スタンスは、小売業はじめ他の産業においても参考となる点を多く備えています。
(1):値引き依存ではなく定価で安く提供しかつ自社の粗利率も確保している
(2):自社の利益確保のために業務改善、メニューの見直し、客単価アップで補填
(3):低価格なだけではなく、各カテゴリーで長く愛される品質高い象徴的な商品
これは実はアパレル業界のユニクロにも同じようなことがいえるのではないでしょうか。
定価が安く、高い機能性を備え、インナー、ダウン、ニットなどで象徴的な商品が確立されています。
22年9月〜23年2月までのユニクロの客単価は前年比111.8%であり、売り上げをけん引しているのは客数ではなく客単価です。
値上げやサービス内容改訂のタイミングが大変難しい市場環境にある今、その判断を見誤ると顧客離れを起こし、原価の高騰以上の打撃を被りかねません。
賃金が上昇せず、しかも人口減少と店舗の飽和が課題の日本市場において、サイゼリヤやユニクロの事業展開には、他の産業でも参考になる多くのヒントが隠されていると思い、本日のコラムとしました。
最後までお読み頂きありがとうございました。
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